トラツグミ
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| 年明け以降、雪の降らなかった日が2日しかない。来る日も来る日も降り積む雪。ニュースによれば、15年ぶりの大雪らしい。積雪は青森市内で既に1メートルを越えている。道路脇に積み上げられた雪の山は人の背の高さをはるかに越え、街路樹は枝しか見えない。交通事故、雪掻き中の転落死、憂鬱な報道が続く。憧れの雪景色も、ここまで来ると脅威だ。初めて迎える青森の冬は、正直なところ想像を絶する世界だった。 そんな日が続くものだから、せっかくの休みというのに何だかやる気が起こらない。かといって家でぼーっとしているのも勿体ないので、今日は、秋に見当をつけておいたナナカマドの実を見て回ることにした。目的地は町外れの墓地。10月に見たときには真っ赤な実がわんさかなっていた。あれからどうなったのか一目見ておきたかった。 冬季閉鎖状態の霊園は、当然といえば当然だが、雪に埋もれていた。1歩進むたびに、足が50センチくらい沈む。かんじきを持ってこなかったことを後悔しつつ、重い足取りでナナカマドがあった方角へ進む。風が吹くと、木の枝に乗った雪が固まりでドドンと落ちてきて、雪煙がもうもうと舞う。空からは少し粒の大きい雪。気温は0度くらいだろう。いつもより暖かい。 やっとの思いで木の見えるところまでたどり着く。赤い実は半分くらい無くなっていた。明らかに鳥がかじった形跡がある。少し距離をおいて、待ってみることにした。 「キュン、キュン、キュン」アトリの群れが波のように曇天の空を渡っていく。200羽以上はいるだろう。「フイッ、フイッ」冬枯れの桜にウソが止まっている。こんな雪の下でも桜の木は花芽を準備しているに違いない。 2時間待ったが、ナナカマドには何もやって来なかった。きっと、この木は旬を過ぎてしまったのだろう。不思議なもので、どんなに沢山実のなる木があっても、鳥たちの集まる木は決まっている。人の目には同じような熟れ具合に見える実も、実際食べている彼らには美味しいのとそうでないのがあるに違いない。「今日は外れたなあ・・・」自分のつけた足跡を辿って、来た道を引き返す。 バス通りまでの長い下り坂をとぼとぼ歩く。延々続く雪の回廊。除雪された雪が地層のように積み重なり、時々ナナカマドの赤い実が混じっている。 「キーキッ」鋭い声が響いた。「ツグミや」道の反対側のナナカマドに鳥影がいくつも見える。ツグミ、ヒヨドリ、シロハラ。「こんなところにおったんか」住宅街の外れ。近くの民家では家族総出で雪掻き中だ。よっこらしょと雪の壁を登り、座り込んだ。入れ代り、立ち代り鳥がやってくる。今日は、この木が一番彼らの口にあったに違いない。犬を連れた人が木の傍を通って、鳥たちは一斉に飛び去った。 雪雲の向こうの太陽も傾いたのだろう、段々薄暗くなってきた。帰り支度を始めたその時、大きな鳥が真正面から飛んできた。「ありゃ」相変わらずのすまし顔。それにしてもこんな所で会うとは思いもよらなかった。目の前で、トラツグミが赤い実をついばみ始めた。 雪国のトラツグミ。本来、地面で餌を採る彼がどうしてここにいるのだろう。南に下ればもっと楽に暮らせるだろうに、物好きな奴だ。「でも、こいつらがいれば、冬も乗り切れる」そんな思いを抱きながら、凍った坂道を下って行く。また今日も鳥に救われた気がする。 |
| (2001/1/21) |