チゴハヤブサ
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| 天気予報がはずれ、良く晴れた先週の土曜日、弘前公園に出掛けた。お目当てはチゴハヤブサ。北海道や東北地方の一部で繁殖するハヤブサの仲間だ。お盆に一度出掛け、松の木に止まる姿を観察していた。きっと今日も止まってくれるに違いない。たわわに実ったリンゴ園を眼下に見ながら、僕は東北自動車道を南下した。 「ケーケッケッケッケ・・・」けたたましい鳴き声で叫ぶチゴハヤブサは簡単に見つかった。やはり以前姿を見かけた松の木に止まっていた。左の枯れ枝に1羽、そして右の枯れ枝にも1羽。模様が薄茶色をしている。今年生まれの若鳥らしい。この公園か、近くの神社か、いずれにしてもこの弘前の街中で生まれた兄弟だろう。強い西風にあおられて松の枯れ枝がグラグラ揺れる。兄弟は翼で上手くバランスをとりながら、しっかりと枝を掴んでいた。 「バードウオッチングですか?」振り返ると老齢の男性がニコニコ笑っていた。「そうです。チゴハヤブサです」「ハヤブサでなくって、チゴハヤブサね。小さいやつだ」「そうです」「ふーん・・・」老人は時折枯れ松を見上げながら、公園の外に向かって歩いていった。「何見てるの?」今度は中年夫婦が近寄ってきた。「鳥を見てます」「あんれ、鳥?どれ?」「これです」僕は、チゴハヤブサに望遠レンズを向けた。「まあ・・・」中年夫婦は交代でカメラのファインダーを覗き込む。「チゴハヤブサといいます」「チゴハヤブサ・・・ま、可愛い顔!あなた、ずっとこれ見てるの?」「いえいえ、今来たばかりです」「まだまだ頑張るの?」「ええ、もう少し」「じゃ、飲む?」「は?」「ビール、ビール!」「いやあ、残念ながら車なのでご遠慮します」「そう、じゃ、頑張ってね」中年夫婦はゆっくりとした足取りで公園の中に姿を消した。 不思議なことに、鳥の観察をしていると、誰彼となく寄ってきては何か恵んでくれる。お茶、ジュース、お菓子・・・よっぽど物欲しげに見えるのかなあ・・・そんなとりとめの無いことを考えていると、左側のチゴハヤブサが風上に向かって翼を広げ、蝶のように軽いはばたきで飛び立った。それに続くように右側も風に乗って東の空に流れていった。 帰り道、弘前市内を走っていると、住宅街の上空を低くチゴハヤブサが飛んでいた。軽い身のこなしでツバメのように空中を滑っていく。餌となる小鳥や虫を探しているのだろう。チゴハヤブサがそこにいることがとても自然で違和感がない。チゴハヤブサを知る老人、ビールを差し出す中年夫婦、そしてさりげなく街中を飛び交うチゴハヤブサ。「侮れない街だ・・・」僕は、弘前という街の奥深さに一人感心していた。 |
| (2000/9/9) |