サシバ


 日本各地の里山で子育てを終えたタカたちが遠い南の島へ帰って行く季節がやって来た。「サシバ」もそんな渡りをするタカの一種だ。
 秋の不順な天候の合間、ぽっかり開いた青空の朝、サシバたちはくるくると山々から舞い上がる。風をつかんでは、スーッと南を目指して滑っていく。1羽、2羽、3羽・・・。渡りの名所では、頭上を数え切れないくらいのサシバが舞う。上昇気流に乗って蚊柱のようにサシバたちが舞う様は圧巻で、こちらはただただポカンと見上げるばかりだ。
 夏の間、サシバたちは全国の山に散っていて、なかなかお目にかかれない。だからこうして秋晴れの日、沢山集まって渡っていくサシバを見ていると、「どこにこんなに隠れていたのだろう?」と毎年、不思議に思う。
 今日、今シーズン初めてのタカウオッチングに出掛けてきた。場所は六甲山系の西側に位置する菊水山。標高458.9メートル。山というよりは小高い丘。住宅街の外れにあり、地元の散歩コースとなっている。
 登り口に到着した時は、もう午後1時を回っていた。曇り空の隙間から、青空が顔をのぞかせ始めていた。随分涼しくなったものだと思いながら、デイパックを背負い、アスファルトの道をぶらぶら登る。道ばたにはイヌタデやヒガンバナ。ジョロウグモが立派な巣を幾つも作っている。桜の木にツクツクボウシが止まって鳴いていた。カメラを取り出して写真を撮っていると、ツクツクボウシは鳴き終わり、不意に飛び去った。その飛んでいく先に、高く高くタカの影が見えた。ハチクマが1羽、2羽・・・サシバも1羽混じっている。全部で9羽。青空と雲の境目をくるくる輪を書きながら昇っていく。風をつかんだ後は、南に向かって一直線に滑り出す。「今年も会えた」、はやる気持ちを抑えつつ、再び頂上に向かって歩き出す。
 頂上では、探鳥会が開かれていた。20人くらいのバードウオッチャーがわいわい言いながら、賑やかに空を眺めている。昨日、今日と300羽ずつ飛んでいるそうだ。3時半頃まで頂上にいたが、僕が目にしたのはハチクマ1羽だけだった。「サシバのタカ柱は来週以降にとっておこう」、負け惜しみを言いながら、とぼとぼとアスファルトの道を下っていった。
(1999/9/26)