オオヨシキリ
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| バードウオッチングを始めたばかりの頃は、初夏以降、暑くて鳥を見ていなかった。思えば勿体ない話だ。 ある年の6月、大学のサークルの新入生歓迎合宿のため、琵琶湖畔のキャンプ場に出掛けた。テント設営係は松林の中にテントを幾張りも張った。食事係は定番のカレーを作り、焚き火係は薪を拾う。こういうキャンプの際、僕はいつも飯炊き係だった。ガスコンロを幾つも並べてコッヘルで飯を炊く。水加減さえ上手くいけば後は少々放っておいても上手に炊ける(もっとも僕の炊く飯は、大学卒業まで誰も誉めてくれることがなかった。あんまり放っておきすぎて焦げたり、水加減が悪くてボリボリと芯が残ったり、逆に水を入れすぎてベチャベチャになったりしたからだ。それなら、誰か代わってくれれば良いのに、責任重大な飯炊きは皆、人に任せるのだった。)。日が暮れると、焚き火を囲み、酒を酌み交わす。酔いが回ると湖に飛び込む者が出てくる。思えば、アホな大学生を絵に描いたような集団だった。 深夜、焚き火の火が燃え尽きる頃、ぐでんぐでんに酔ったままテントに潜り込み、死んだように眠る。 朝、外が明るくなると、不思議に目が覚めた。頭が痛い。酒だか何だか分からぬ異臭に耐えかね、テントからもそもそ這い出す。「うー・・・」唸りながら顔を洗う。「カッコー、カッコー」葦原の方角からカッコウの鳴き声。「うー・・・」足を引きずるようにして、双眼鏡だけ首からぶら下げ、声のする方に向かう。遥か彼方の木にカッコウは止まっていた。「キョ、キョ・・・」近くの葦の茂みからカエルが潰れたような声がする。「うー・・・?」「キョ、キョ、キョ・・・ギョギョシ、ギョギョシ、ギョギョシ」枯れた葦の茎を一羽の鳥が登っていた。「ギョギョシ、ギョギョシ」大きく開いた口の中は真っ赤っかだった。「うー・・・!うぅおおオオヨシキリ、うー・・・」鳥は朝の光の中で、とりつかれたように囀っていた。「うー・・・カ、カメラ・・・」異臭のするテントにカメラを取りに向かう。「うー、酒、やめよ・・・」僕は、昨夜の行状とこれまでの夏鳥に対する態度を深く深く反省した。 これが夏鳥に目覚めた記念すべき日の出来事だった。 |
| (2000/6/10) |