ノビタキ


 初めての出会いは、初秋の川原だった。生い茂った芦の穂にモズが止まり、ギチギチと鳴いていた。川原は所々思い出したように草が刈られ、そこから季節を間違えたセイヨウカラシナが短い茎を延ばし、申し訳程度に黄色い花を咲かせていた。飛び交う白いチョウやアブを目がけ枯れ草から飛び立ち、捕らえては元に戻る小鳥、それがノビタキだった。ノビタキは地味な茶色の羽をしていて、鳥に興味が無ければスズメと区別がつかない。子供も、犬を散歩させている人も、誰もノビタキの存在に気づく人はいなかった。バードウオッチングを始めて間もない僕は、一人得した気分で双眼鏡を覗いていた。

 その後、夏の北海道で黒・白・赤茶色の三色に彩られた雄のノビタキ(写真左)に出会ったりはしたが、僕にとってのノビタキは、相変わらず、秋の風景にひっそり溶け込む茶色の小鳥だった。セイタカアワダチソウの咲く埋立地の原っぱで、刈り取りの終わった晩秋の休耕田で、タカ渡る岬近くの海岸で、秋のある日、不意に姿を現す鳥だった。

 今年、僕は青森で初めての秋を迎えている。黄金色の田んぼにはアカトンボが飛び交い、道ばたにはコスモスやイヌタデが花を咲かせている。そして、あぜ道に立てられた棒杭には茶色い小さなノビタキが止まっている。草むら目がけて飛び立つ姿は、初めて出会った日と何も変わりない。違うのは、出会いの時期が一ヶ月近く早いことだけだ。
 シギ・チドリが夏の終わりを告げる鳥なら、ノビタキは秋の深まりを教えてくれる鳥だろう。あとどの位、ノビタキたちは青森に止まっているのか。北風がノビタキを南に追い払うとき、北国の長い冬が始まるに違いない。
(2000/9/17)