モズ


 来週木曜日・3月16日から始まる写真展の準備のため、いつもプリントをお願いしているラボに行った日のこと。仕上がった写真をテーブルの上にざーっと広げていると、お店に来ていた他のお客さんが3〜4人、好奇心に満ちた目をして寄ってきた。このラボは、腕に自信のある人が沢山集まっているので、写真を見る目も厳しい。期日が到来すれば展示する作品とはいえ、まだ額装もせず、現像所からあがってきたばかりの写真を見られるのは、こちらも緊張する。ちょっと引きつった顔で、一枚一枚仕上がりをチェックする。
 「これはなんていう鳥でっか?」梅の枝に止まるモズの写真に質問が飛んだ。「これはモズです。」数年前、大阪城公園の梅林で撮影した雌のモズの写真だ。「梅にモズ」とは変な取り合わせだなあと思いながらも、出来上がりは意外と落ち着いた絵になっていたので、今回展示することにした作品だった。「モズでっか?スズメかと思うた。」「雌のモズです。大阪城の梅林で撮ったものです。」「へえ、あんなところにおりまんのか?」「虫を捕まえて食べてました。」「ほお、虫を・・・」
 茶色の小鳥は皆スズメ。鳥にあまり興味のない人にはそう見えるだろうし、それはそれで仕方ないことだと思う。ほんの少しでいい、好奇心を持って鳥影をみつめる気持ちがあれば、スズメ以外の鳥との出会いもそう難しくはない。身近な場所に野生の鳥が暮らしていること、何気ない人の行動に翻弄される鳥たちがいること、そんなことに気づいて欲しい。僕の写真展がそのきっかけの一つにでもなれば、作者としてこれ以上嬉しいことはないと思う。
 「これはコマドリ、あれはミソサザイ・・・」「へえ・・・ほお・・・」「そんなのがおりまんのか?」ひとしきり説明を聞いて、お客さんは納得したようにワイワイと去っていった。静かになったお店の中で、僕はもう一度写真のチェックを始めた。
(2000/3/12)