ミソサザイ


 最近、森が気になってしかたない。特にブナの森は格別だ。関西でも、標高1000メートル以上の山であれば、ブナの森が残っている。落ち葉踏み分ける季節も、雪を固めながら歩く季節も、それぞれ趣がある。しかし、新緑の季節の清々しさにはかなわない。
 若葉の森に複雑な節回しの囀りが響く。ミソサザイだ。体長10センチ程度の小さい身体で精一杯声を張り上げている。物怖じもせず、すぐそばまでやってくる。地味な鳥なのに何故だか目が離せない。一所懸命鳴く姿が良い。
 木々の緑が濃くなってくると、鳥たちの姿は段々見えにくくなる。そんな時期、僕の歩みはどんどん遅くなる。そして、意味もなく道ばたに腰を下ろしてみる。そして汗など拭いてみる。元気なミソサザイがひょっこり姿を現すことを期待しながら。 
(1999/5/17)