マミジロ
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| 鳥を撮り始めた10数年前、3万9000円で買った中古のニッコール300ミリF4.5というレンズが、僕の持つ唯一の望遠レンズだった。 ゴールデンウイーク前後の期間、大阪城公園は渡り鳥が翼を休めに立ち寄るので、その渡り鳥目当てのバードウオッチャーやカメラマンが大勢集まる。僕もご多分に漏れず、300ミリレンズを持っていそいそと出掛けていた。 公園では、人の顔の大きさくらいある口径の500ミリや600ミリといった高級レンズを三脚につけて肩に担いだおじさん達が、誇らしげに闊歩していた。僕は自分の貧弱なレンズに一抹の寂しさを感じながらも、キビタキやオオルリを見つけては夢中でシャッターを切っていた。しかし、口径の小さいレンズでは、暗い木陰の鳥はシャッター速度が遅すぎて、全然撮れている手応えがない。「大口径のレンズが欲しいなあ・・・」貧乏学生にはとても手が出ないレンズでバシバシ撮っているおじさん達を横目に、溜息をついたものだ。 そんな時、落ち葉をかさかさひっくり返しながら、1羽の鳥が近づいてきた。「マミジロ!」。ツグミの仲間の夏鳥で、渡りの時期以外は殆どお目にかかることがない鳥だ。名前のとおり、雄は全身真っ黒で眉だけ白い。彼は、しゃがみこんでいる僕の方へどんどん寄ってきた。心臓をどきどきさせながら、ほんの5〜6メートルの距離に来た彼に向かってシャッターを切った。相変わらずのスローシャッターだったが、不思議にも手応えがあった。彼は僕を無視して、すぐそばを通り過ぎていった。鼓動は相変わらず鳴り続けていた。 今では羨ましかった望遠レンズも数本揃え、機材に不満は無くなった。しかし、この10数年間、マミジロに向かってシャッターを切るチャンスは1度もなかった。巡り合わせとは不思議なもの。あの日のマミジロの写真を見るたびにそんなことを思う。 |
| (1999/4/17) |