コヨシキリ
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| 北海道が好きで、数年前までは年に2回程、出掛けることにしていた。勿論サラリーマンの休暇は限られているから、長くても1週間、短ければ3日の旅だ。北海道の一番楽しい季節は何と言っても夏。海岸沿いの原生花園で花が咲き乱れ、鳥が歌う、天国のような光景が眼前に広がる。関西のよどんだ熱気にイライラ感が募り始めると、なんとかこの状況を脱出できないものかとスケジュール帳とにらめっこし、北国への逃亡を企てたものだ。 原生花園の鳥の中で、最も物怖じしない小鳥はコヨシキリだろう。小さな身体に似合わぬ大きな囀り。節回しも花園の鳥の中では一番複雑だ。涼しい風に吹かれながら、短い北の夏を謳歌するコヨシキリに、僕は数知れずシャッターを押した。 関西を離れ、図らずも僕は青森という北国にやって来ることになった。身辺が片づかないまま、週末、気が付けば僕は車を三沢市の仏沼に向けて走らせていた。北国の夏は短い。繁殖のスタートが遅い北の鳥とはいえ、早くしなければ何時小鳥達が鳴き止むか分からない。 仏沼は噂に違わず小鳥の多い場所だった。聞き慣れぬオオセッカやコジュリンの囀りが干拓地のあちこちから聞こえてくる。「これは凄い・・・」興奮を抑えながら、干拓地の中を移動していると、目の前の葦に小鳥が一羽止まった。「ジョリリ、キリリ、チョリリ・・・」聞き覚えのある声だ。「コヨシキリ!」葦の茎にしっかりつかまって、鳥は天に向かって囀り続けていた。「そうか、そうか。おまえもいたか!」旧知の友人に会ったような安堵感を覚える。「今日から本格的に北国の鳥達とのつきあいが始まるんだ」何か、心の中で一つの区切りがついたような、コヨシキリとの再会の瞬間だった。 |
| (2000/7/23) |