コアジサシ


 暑いのは苦手だ。写真同好会に入っていた高校生の頃、真夏の暗室で脱水症状を起こしたことがあり、それ以来、自分は暑さに弱い人種だと思っている。したがって、太陽が照りつける海辺で、塩まじりの風にさらされて鳥を見るなどもってのほか。あっという間に倒れそうになる。絶対そんな場所には近づきたくない。 
 コアジサシは、そんな(僕にとっては)過酷な場所で子育てをする夏鳥。繁殖のため、はるか南半球から日本各地の埋立地や河原にやってくる。「キリリ、キリリ・・・」と鳴きながら、シャープな翼で海上を飛び回り、時折水中に飛び込んで小魚を捕まえる。まさに電光石火の早業。ほれぼれする身のこなしで、見ていて飽きることがない。それだから、かえって質が悪い。知らず知らずの間に時間が経つ。意識が朦朧としてくる。
 僕は暑いのは苦手だ。夏の海辺にはできるだけ近づきたくないのだ。それなのに、コアジサシがやって来るから、彼らに会いに毎年フラフラ出掛けてしまう。まったくほんとに困ったものだ。
(1999/5/23)