キビタキ


 ゴールデンウイークが始まった。市街地の公園や日本海側の離島では、大勢のバードウオッチャーが渡り鳥の観察を楽しんでいるに違いない。沢山の種類の野鳥に短時間で会える、一年の中で最も楽しい季節だ。
 この時期、一番見たい鳥は何ですか?と尋ねられれば、僕は迷わずキビタキを選ぶだろう。決して珍しい鳥ではない。先述の公園や離島ならホイホイ出てくる普通種だ。なのに心惹かれる。まず姿が良い。黄色と黒のコントラストが若葉に映える。次に声も良い。広葉樹林に「ピッポロピ、ピッポロピ・・・」という囀りが響くとき、実に晴れ晴れとした気持ちになる。

 初めてキビタキに出会ったのは大阪城公園だった。大学のサークルの仲間と共に双眼鏡を首からぶら下げ、新緑のケヤキ並木の下を歩いていた時、少し離れた木の枝に軽い身のこなしでフワリと鳥が止まった。同級生のSが叫ぶ。「キビタキ!」その鮮やかさに息を呑んだ。
 初めてその囀りを聞いたのは通い慣れた能勢妙見山だった。よく晴れた5月の谷道をえっちらおっちら登っていると、林の中から「ピッポロピ、ピッポロピ・・・」と聞き慣れぬ声。坂道を上ったり下りたり、木と木の隙間を双眼鏡で一所懸命探して、初めて囀る姿を捉えた頃には額にうっすら汗がにじんでいた。当のキビタキは我関せず、よくとおる声で涼しげに囀っていた。

 出会った鳥の印象は、その季節の空気と共に記憶に残る。5月の風に吹かれながら、新緑の森でキビタキに出会ったなら、その印象はきっと、一生心に刻みつけられるに違いない。  
(2000/4/30)