フクロウ


 何かに導かれるような出会いがある。僕の場合、フクロウとの出会いがそうだった。
 7年前の3月下旬、ある山里をこれといった目的もなく歩き回っていた。桜にはまだ早いし、冬鳥も少ない。全く無目的の散策だった。普段なら、登りは避けて平坦なコースを歩くのだが、その日はあんまり何もいないものだから、半ばやけくそ気味に「とにかく登るのだ!」と、一度も登ったことのない谷をガンガン上がっていった。ガンガン上がっていくうちにどんどん息が切れ、だんだん足下がおぼつかなくなってきた。日頃の運動不足を反省しつつ、一休みしていると、一本の木が目についた。クヌギの木だ。根元の方に大きな洞ができている。僕は、樹洞を見ると覗かずにはいられない性質で、ふらふらとクヌギに近づいて行った。入り口あたりに鳥の羽毛が一枚くっついていた。「何か入ってたりして・・・」淡い期待を抱きつつ、そっと洞を覗いてみた。「!」何かいる。こっちを見ている。慌てて洞から顔を離す。息を整え、もう一度、今度はじっくり見てみる。「・・・フクロウだ」丸くて黒い大きな目をしたフクロウがこちらをキッと睨んでいた。抱卵中の雌のフクロウだった。
 この谷のフクロウは、それから毎年2羽ずつ雛を育てた。そして、若葉が生い茂る5月中旬、巣立った2羽の雛たちと共に山の奥深く姿を消し、また翌年の春には夫婦連れだってこの谷に帰ってきた。僕は、その後の3年間で計6羽の雛の巣立ちを確認した。
 出会いから4年で残念ながらフクロウを育ててきた林は無くなった。どんどん住みにくくなっていく山里で、フクロウ夫婦や巣立っていった子供達はどうしているのだろう。山に青葉が茂る頃、もう一度どこかであのフクロウ一家に巡り会いたい。 
(1999/5/8)