ハイイロチュウヒ


 岡山県の西の端、笠岡干拓に遠征してきた。目的は二つあった。一つはこの冬ずっと探し続けているコミミズクに会うこと、もう一つは山口の写真家Kさんに会うことだった。Kさんは、アマチュアながら、「人工物と野鳥」という自然写真界に従来なかったテーマで次々と意欲作を発表されている方で、是非一度お会いしたいと思っていた。それが、共通の鳥仲間である奈良のHさんの紹介で今回実現することとなった。
 いつも通り朝遅く出発したので、現地に到着したのはお昼だった。広い干拓地をとりあえず車で一巡り。暖冬のためか、休耕田には青々と草が生えている。思いの外、鷹影が少ないなと思っていると、道ばたから不意に鳥が飛び出した。全身薄いグレー、翼の先だけが黒い。ハイイロチュウヒの雄だ。休耕田の上を低く、蝶のように飛んでいる。ヒラリヒラリと翼を小さく羽ばたかせ、時折急降下する。獲物を狙っているようだが、全然成功しない。なんとも優雅な狩り。
 Kさん、Hさんとは待ち合わせの場所も時間も決めていなかった。Kさんとはお互いどんな車に乗っているかさえ知らなかったが、まあ、なんとかなるだろうと思い、干拓地のはずれの池にカモを見に行くことにした。フィールドスコープでスズガモやハシビロガモがたくさん浮いている水面を眺めていると、山口ナンバーの車が1台やって来た。Kさんだった。優しそうな方だ。年齢は40代半ばのはずだが、もっと若く見える。「こんにちわ」初めてお会いするのに、そんな気がしなかったのは、メールのやりとりをしていたことや、作品をいつも拝見していたからだろうか。
 その後、Hさんと合流。しばし雑談の後、思い思いの場所に散った。
 大きく日が傾く時間、コミミズクを待っていると、Kさんがやって来た。「コミミいましたか?」Kさんが首を横に振る。どこからやって来たのか、首輪をつけたシベリアンハスキーが僕にまとわりつく。Kさんの方に追いやろうとするが、いっこうに離れてくれない。「気に入られたねえ」Kさんが笑っている。色はハイイロチュウヒに良く似ているが、犬ではどうしようもない。犬は手をベロベロ舐め始めた。「ひええ・・・」
 夕日が堤防の向こうに沈んでいく。Kさんと出会った池からスズガモがどっと飛び立った。「あ、あれ行ってみよう!」Kさんの目が輝く。広角ズームを装着したカメラを持って、Kさんは池の方向に走り始めた。僕も遅れまいと、カメラを持って後を追いかけた。ハスキーはというと、尻尾を振りながらどこまでも後をついてくるのだった。
(2000/1/16)
 Kさんとは、知る人ぞ知る、川本美千夫さんです!(1/21追記)