バン
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| 刈り入れの始まった水田地帯の農道で、車をゆっくり流していた。関西地方の田んぼと違って、青森の田にどこか寂しい感じを覚えるのは、ただ季節の進行が早いことから受ける印象のせいだけではなく、そこに生き物の姿が少ないせいだろう。田のあるところ必ずといっていいほどそこにいた、シラサギもケリもここにはいない。 あぜ道から何か黒い影が飛び出し、目の前を横切った。黒い影は黄金色の穂を垂らした稲の間に飛び込み、姿を消した。一瞬の出来事。こういう時はやみくもに探し回るのではなく、車の中でじっと待ってみるに限る。油断した相手がひょっこり顔を出すことがあるからだ。 二分、三分と時が過ぎる。アカトンボがふらふら稲穂の上を飛んでいる。カラスが刈り取りの終わった田んぼで何かほじくっている。「ふあ〜っ」欠伸を誘う風景。 稲の間から不意に鳥が顔を出した。「ああ、バンか・・・」今年生まれらしき、バンの幼鳥。まだ幼い顔立ちは、成鳥のそれとは趣が異なる(上の写真は成鳥)。ただ、警戒心だけは一人前で、こちらを見据えて微動だにしない。何分にらめっこが続いたろう。若いバンは、急に落ち着かない様子になり、キョロキョロ辺りを見回し始めた。草をつつく仕草はこちらを油断させるポーズ。逃げるタイミングを図っているに違いない。案の定、鳥はトコトコと急に歩くスピードを上げ、田と田の間の深い溝をあっさり飛び越え、隣の田んぼに姿を消した。 シラサギもケリもいない田んぼで生まれ育ったバンの若鳥。寂しい風景に添えられた顔なじみの鳥に、心和む秋の日の出来事だった。 |
| (2000/9/24) |