アオバト
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| 弘前市在住・村田孝嗣さんの「青森県野鳥物語」という本を、妻が図書館から借りてきてくれた。18年前に東奥日報夕刊で連載された文章を1冊の本にまとめたものだ。野鳥事情は当時と随分変わっているだろうから、この本に書いてあることが今の青森にそのまま当てはまりはしないだろう、そう思いながらも僕は、四季折々の野鳥たちとの出会いを綴った文章に引き込まれていった。中でも興味をそそられたのは、夏の間、とある海岸で見られるアオバトの群の話だった。アオバトは普段山奥で暮らしているハトだが、夏の間、何のためだか海水を飲みに海岸の岩場にやって来る。そういう生態は図鑑などで前から知っていたが、実際にお目にかかったことは無かった。「野鳥物語」には海水を飲むアオバトが100羽も集まる海岸の話が記されていた。夢のような話だ。「行ってみるか」本に書かれた地名を頼りに僕は日本海方面へ車を走らせた。 探鳥地の地図があるわけではなかった。文中に記載された地名と地形、周囲の景色だけを頼りに目的の場所を探す、そんな宝探しのような探鳥だった。岩礁と林とが比較的隣接した場所、本には潮だまりで人が遊ぶ風景も描かれているから、きっと釣り人や海水浴客が容易に出入りできる場所に違いない。海岸沿いを走りながら、そんな風景を探す。「あ!」目の前に正にそんな風景が開けた。車を堤防で止める。ここで待ってアオバトが現れなければ、それはそれで仕方ない。何せ18年も前の物語なのだから。 開け放した車の窓を生ぬるい潮風がゆっくり通り過ぎる。低く雲の垂れ込めた空から今にも雨が落ちて来そうだった。1時間ほど経ったろうか、海岸とは反対側の林に目を移した時、10数羽のハトのシルエットが林の向こうに消えていった。「いた・・・」ハトは林の上を何度も旋回した。そして、次第に数を増していった。その数ざっと100羽。「本当にいた!」アオバトたちは釣り人や潮だまりで遊ぶ子供を避けるように、遠く離れた岩場に舞い降りた。双眼鏡でも遠すぎて良く見えないが、きっと海水を飲んでいるのだろう。波に驚いては林に引き返す。しばらくするとまた岩場に舞い降りる。18年前から、いや、もっと前から繰り返されただろうこの光景。物語が昔話になる前にここに来ることができて良かった。僕はそんな思いを一人噛みしめていた。 |
| (2000/8/27) |