鳴きまねは楽し

 本日(3月10日)付朝日新聞夕刊の「あすの天気」の欄を見てみると、今年は生物前線の北上が平年より2週間早いそうだ。今月末、沖縄から帰ってくる頃には今まで黙っていた鳥たちのさえずりが沢山聞けるだろう。
 2月28日に、妙見山に行った。頂上でウソが鳴いていたので、何かの本で読んだ通りくちぶえを吹いて鳴き声を真似してみたら、10メートル位のところまでやってきた。「フイッ、フイッ」とふくと、「フイッ、フイッ」と応えてくれる。むこうは、どこかから敵がやって来たとでも思ったのかも知れないが、こっちはウソが寄ってきてくれるということが只嬉しいだけである。
 このことがあってから、鳥の鳴き真似をするようになった。ベニマシコは逃げてしまった。シメには知らんぷりされてしまった。ヒドリガモはこちらが鳴いても鳴かなくてもピューピュー言っている。キジバトの真似はちょっとできないし、コサギはグエーッとしか鳴かない。要するにウソ以外には相手にされていないわけだ。
 今日、阪大坂を歩いていると、イカルがグズグズとぐぜっていた。口笛で「キーコーキー」「キーコーキー」と吹いてみると、不思議そうな顔をしている。また「キーコーキー」と吹きながら脇を通り過ぎた。相変わらず不思議そうな表情だ。10メートルくらい歩いてから、もう一回「キーコーキー」とやってみた。背後から「キーコーキー」という鳴き声が聞こえてきた。何度も何度も繰り返し「キーコーキー」といっている。こちらはといえば、してやったりと嬉しそうな顔をしているのだった。
(Moctiluca 1987.3)
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