三和銀行 香港支店

書誌情報

立石泰則

書名:三和銀行 香港支店

発行所:講談社

発行日:97.5.26

定価:1700円(税別)

ISBN4-06-208709-x


海外進出。国際化。グローバル経営。ビジネス記事はにぎわっているけれども、そのような動きを前線で担う日本人たちはどのような気持ちで取り組んでいるのか、また、日本国内を地盤としていた企業が海外に進出し、そこでプロフィット・センターとして成り立つためには、どのような事業観で事にあたるべきなのか。

これまで、日本国内を主たるビジネスの場として来た企業に勤める人にとって、先達の本音の苦労を共有させてもらえるとうれしい。そんな気持ちに答えてくれる一冊でありました。本書を購読するまで、中川も三和銀行さんが、これほどまでに香港、中国のビジネスに真剣に取り組んでおられることを不明にして存じ上げませんでした。けれども、その在り方を理解できたように思います。

以下、中国、香港ビジネスの直接的経験のない中川なりに感じたポイントを記してみます。

  1. 海外に拠点を作る。そのきっかけは国内の取引先が海外で事業を展開するということであった。取引先についていかないと国内のビジネスが危なくなる。その危機感がトリガーだった。その危機感にトップが真剣にならなければ拠点開設は実現しなかった。
  2. 海外拠点のビジネスを本格化し、プロフィット・センターとして成立させるためには、日系の取引先とのビジネスだけではクリティカル・マスに達しない。地場企業とのビジネスを本格化しなければプロフィット・センター足りえない。そのハードルは高く、また、必要とされるコミットも大きい。継続的にコミットできるかどうかが問われた。
  3. プロフィット・センターとして成立するためにローカル社員対日本からの社員の比率は10:1にまでなる。社員自体のローカル化、権限委譲を進めるとともに、現地コミュニティに責任者が参画し、自らの責任で発言し、貢献施策を実施することも要件となる。
  4. 採用・育成・任用。三和銀行の場合は、スモール・リスク、ミディアム・リターンという自行の体系、また、新卒の行員を採用して育成するという自行のやり方に、固執し、後発の邦銀のようなヘッドハンター頼りという仕方は取らなかった。30年という時間をかけて、この面でも根付いた。

新たに海外に拠点をつくる。他社がやっているから、自分たちもやる。あるトップの思い込みだけで進出するけれども、後から及腰となり、つまるところ「誰かさんの伊達や酔狂」でしかなかった。ような企業は香港、中国でも結局授業料だけ払っておしまいになっているようです。トップのコミットがあって、それで、現地にいる日本人スタッフも安心して腰を落ち着けて取り組める。それだから、ローカルのスタッフの人たちに対しても説得力が生まれ、それが安心感につながる。30年かけて取り組んだ成果が花開いている。そんな感想を持った次第です。

970920 phrases by 中川一郎





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