青汁顛末記 5(完結編)



俺は何かに弾かれるように青汁の袋の口を開けた。

と、鼻を突く凄いニオイがプーーンとあたりに、いや、部屋中に 立ちこめる。そのニオイをかいで最初に考えたことは・・

「これを飲んだら死ぬ」

いや、このニオイ。本当にシャレんなってねぇよ、これ。 これ本当に飲み物かよー!! マジかよーー!! ひでぇよコレ。

おっと、あまりの興奮のため、文体が乱れたようだ。失礼失礼。 とにかく凄いニオイなのだ。例えるなら・・そう、山の奥深くに 生えている謎の薬草を一年間倉庫の中に寝かせておいて、一年ぶり に取り出してかいでみたニオイといえば少しはイメージが湧く だろうか? とにかく、人間の飲むものとは思えないのである。

しかし・・・そう。もう後にはもどれない。俺は気を取り直して 用意したコップに緑色の液体を注ぐ。 トクトクトク・・・ 袋から排出され、コップの中に鎮座した緑の液体を改めて見ると、 ほんっとーーーーに緑色だ。まさに100%自然の色だ。 俺はしばらくその液体を見つめた後、コップの端を口に運んだ。

ゴクリと一口飲み込む。

「マ・・マズイ!! マズすぎる!!(涙)」

こ、これは・・・こんなマズイ飲み物初めて飲んだ。 とにかく感想はマズイの一言。ドロドロとした最初の舌触りといい、 スライムを飲み込んでいるようなのどごしといい、味といい、口の 中に残る後味といい、ありとあらゆる要素が「マズイ」の一言で 集約される概念にて表現される世界を構築する一員と成り得ている。 謎の薬草を絞って、そこから流れ落ちる緑のしずくをそのまま口に したらきっとこんな味なのだろう。 うげえええぇぇぇ

冷静にもう一口飲んで、味を分析してみよう。 ゴクリ。 そう、味を例えると「抹茶のような感じ」+「謎の薬草(苦い)」 +「ヨモギ」+「お茶」だろうか。まあ、味はともかくとして、 一番ひどいのは後味である。上記の味のうち、「謎の薬草」の味だけが 後をひいてずーーっと残るのである。

もう何も言うまい。みんなも是非一度飲んでみることをお薦めする。 世の中にこんな飲み物があるなんて。青汁の宣伝に出ていた悪役商会の 人の「マズイ」というセリフを身を持って体験できた俺はある意味幸せ なのかもしれない。平林(実は本名)のニヤけた顔がふっとよみがえる。 彼は幸運を運ぶ青い天使だったのかも知れない。 どうしても飲んでみたい人は、俺の家にある残り4パックを喜んで進呈 することを最後に記しておく。                        

end.(長い間ご購読、ありがとうございました)

著作者:田中H






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