板倉雄一郎「社長失格」(日経BP)



この一冊。これから起業する人、今、起業が軌道にのって業容の拡大を検討している人にとって、いや、すべてのビジネスに関わりを持つ人たちにとって得るところの大きな一冊ではないか。また、経営を学ぼうという人たちにも、日本では希有なケース・スタディに耐えうる記録だろうと思う。

この一冊を読みながら、起業支援というか、経営支援というか、そういう事業があれば、シリコン・バレーにあるといわれている 起業支援の事業のネットワーク的な集積があれば、ずいぶんと異なる結果が出るだろうにとか。そんなことを思った。資本市場の 整備のされ方とか、起業をしやすい状況をつくるビジネス群というものがあろうかと思う。

ウェブ・ページを訪れたところ、日本にベンチャー・ビジネスの土壌をつくるということを目指す啓蒙活動を板倉氏は開始され、そして、Perfec TVで番組も持っておられるそうである。

コロンビア大学のビジネス・スクールで学んでいた時、ぼくがもっとも感銘を受けたのは、「企業再建の経営」というセミナーで、アカデミックなバックグラウンドではない企業再建の実践一筋という先生が担当されていた。日本でもビジネス・スクール的なプロフェッショナル教育が徐々に整備されつつあるけれども、そのような中で、起業の経験者、再建の経験者の経験はノウハウを提供するものとして大きな効果を発揮することだろう。

そのような形で、あの時機のHypernet社のような貴重な起業の志が、「ブーム」に踊らされず、アイデアの人、攻めの人が不得意なことを行うことでおかしくなることのないような経済の作りが実現されるように思う。

それぞれの得意なこと、したいことを徹底的に実践し、それがリンクされる。ネット時代の市場経済はそのような形でもう一段違った形で展開されるだろうと思う。今後、板倉氏の活動がそのような土壌作りに大きく貢献することだろう。

久しぶりに出会った、生涯座右の一冊。友人たちに薦めたい一冊であった。

99.01.06 中川一郎 mailto:nakagawa@aa.uno.ne.jp



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