98.12.08 George Gilder on Global Crossing


ジョージ・ギルダーが最新のForbesのエッセイにおいて、Global Crossing社を取り上げ、論評しておりました。読み進めながらメモを取りました。何らかのご参考としていただければ幸いです。

中川自身にとっては、インターネット・トラヒックの増大の仕方と国際通信事業とのリンケージが(はずかしながら、はじめて)くっきりとわかったような気がしました。

洞察が欲しい時には、Gilder Reading。以前、そうだと思っていたプロジェクトで仕事をしていたときにもこのパターンでありました。私にとって、やはりGeorge Gilder は情報通信業界の今後を占ううえでの欠かせないVisionary であります。お勧めのVisionaryなどご存知でしたら、教えてください。


http://www.global.forbes.com/forbes/98/1228/0120048a.htm
George Gilder, "Undersea Treasure", 98.12.28 Forbes Global

ポイント1:対米海底ケーブルの需給は逼迫する。
今後、米国以外の国におけるインターネットが普及し、また、イン
ターネットへのアクセスが高速化することにより、世界のさまざま
な国から米国に向けた海底ケーブル経由のインターネット・トラヒ
ックが増大する。これが原因となって、海底ケーブルの需給は逼迫
する。

ポイント2:この状況が大いに利するのにもかかわらず、Global 
Crossingの現状の株価は低すぎる。
Global Crossing社は、海底ケーブルと地上ケーブルとをワンスト
ップでISPに提供し、ユーザ(ISP、キャリア等)から高い評価を
受けており、今後も大胆に海底ケーブル投資を展開する見込みで、
大きく業容が伸びることが想定される。にもかかわらず、現在の株
価は低いまま放置されている。

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以下、論文を読み進めながら、とったメモであります。

ピーター・ドラッカーは、システムを完成させるために必要不可欠
であるのにも関わらず、欠けている要素を提供する企業が莫大な利
益を上げると語る。現時点で、グローバル・インターネットにおい
てかけている欠けている要素(missing elements)は、ラストマイル
のアクセスと海底光ファイバーケーブルである。ラストマイルにつ
いては、Broadcom社のケーブルモデムや、Qualcomm社の無線技
術によって解決されている。

今後、必要不可欠な海底の帯域幅は、今後、Global Crossing社に
よって提供されることとなろう。

Global Crossing社は、バミューダのハミルトンに本社を置き、97
年末にロンドン〜ニューヨークのケーブルを敷設し始め、98年5つ
きにシステムが作動しはじめた。同社は、2000年の初頭までにアジ
アと南米向けのサービスを開始する予定である。また、同社はこれ
らの海底線をヨーロッパ最大の地上網とQwest社によって提供さ
れる北米主要都市向けの回線で補完する予定である。Global 
Crossing社は、現在稼動している海底ケーブルの58%を所有する
とともに、太平洋向けのケーブル(Pacific Crossing)の58%を
所有する予定である。(残りは、丸紅の所有となる。)この海底ケー
ブルと同様に大阪、名古屋、東京などの主要都市へ低廉な地上回線
を提供する予定である。

ここでは純粋なテレコズム(Telecosm)が働く。Global Crossingは、
光ファイバとWDMを用いることにより、既存網(過負荷の交換機、
光電変換装置、複雑階層の料金体系)をバイパスする。中央集中の
オペレーション、保守サポートのシステムを用いて、Global 
Crossing社はワンストップ・セールス、ワンストップ・サービスの
統合されたグローバルネットワークサービスを提供し、欧州、米国、
アジア、ラテンアメリカを接続する。陸揚げ局で顧客をほったらか
して、後は地域の通信業者のいいようにさせるという既存のケーブ
ル事業者のやり方ではない方法をGlobal Crossing社は採用する。
海底線設備と地上網とを50都市において接続する。

パナマ経由で接続することにより、Global Crossing社はロンドン
〜東京間は、他のキャリアや通信事業者を介することなく接続する
ことができる。Global Crossing社を利用するISPは、さまざまな
通信事業者の調整に煩わされること無く、ロンドン〜東京間をワン
ストップで利用できるのである。

Global Crossing社のシステムはまだ発展途上である。すでに稼動
しているAtlantic Crossing(ケーブルの名称であると思われる)
は、14000kmのリングであり、New York、London、Amsterdam、
Hamburg、Frankfurtのほかのcrossingをとおっている。Mid-
Atlantic Crossingは、New York、Bermuda、St. Coix、miami,
panamaをとおる。パナマにおいて、このカリブ海の設備は、Pan 
American Crossingと接続し、MazatlとTijuanaをループ状に通
り、西海岸のGrover Beach、カリフォルニア、LA、シアトルへと
つながっている。米国の西海岸の都市は、Pacific Crossingとも接
続される。Pacific Crossingは、21000kmのループであり、日本
の二大都市とアジア各国とを接続する。全体で、Global Crossing
社は最高の技術で、50000kmの海底光ファイバーケーブルによる統
合グローバルネットワークを構築しているのである。


これからのインターネット
 インターネットにおける北米のシェアは急速に低下する。

 現存の計画を敷衍すると、1998年から2001年の間に、世界の地
上光ケーブルのキャパシティは光海底ケーブルの25倍に膨れ上が
る。しかし、グローバルのインターネット・トラヒックの膨張はあ
らに莫大である。現在のインターネットトラヒックの成長は、
28.8kbpsのダイヤルアップモデムによるものであるが、次の成長の
波はケーブルモデムやDSLによるものであり、現状の、500倍から
1000倍のスピードとなる。この技術的な進展がビットの増大をもた
らすだけでなく、World Wide Wait状態を解消する方向に働くこ
とが想定され、需要をさらに増大させる。

インターネットは地球規模の公益事業となっている。ISPCONの98
年10月の報告によれば、海外での成長が著しくなっている。過去
18ヶ月の間に、インターネットユーザに占める北米の割合は、80%
から58%に急激に低下した。

グローバルなインターネットユーザの成長率が米国の成長率を上回
る状態が続くにつれて、海底ケーブルのトラヒックの成長率は地上
網のトラヒックの成長率の数倍となる。この私(Gilder)の言葉は
信じた方が良い。向こう5年間、インターネットの海底ケーブル部
分は、インターネット全体のボトルネックとなるだろう。
(agonizing choke point)かくして、Global Crossing社は、
グローバルシステムを構成する上で必要不可欠な要素の供給者とい
う輝かしき位置を占めるのである。

Global Crossing社は、そのオペレーション、マネジメント、技術
のそれぞれの面を複合して、優位に立っている。Gary Winnick氏
がAT&T Submarine SystemsのCEOであったWilliam Carter
氏に200万ドルの小切手を渡したところからすべてがはじまった。
Carter氏は、世界の50%の海底ケーブルの敷設の責任者であった。
現在、Global Crossing社は、光りファイバの敷設に関しては世界
に冠たる位置を占めている。大西洋ケーブル(Atlantic Crossing)
をたったの10ヶ月で敷設した。

1997年3月にGlobal Crossingは設立され、98年末までに
US$4billionを集めた。US$1billionの売上を上げ、US$15million
の利益を計上した。たった20ヶ月のこの上昇は、企業史上まれに
見るものである。

これは、MCI、TCI、McCawと通じるものがある。経営者が企業を
所有する。しかし、外部の投資家はGlobal Crossingの高利の債
券のために大きなキャッシュフローを要求するのである。経営者が
エクイティの奴隷となって、内部のキャッシュフローに安住できな
いことを意味する。経営者は外部資本を確保するために必死になる
のである。(もちろん、資金の確保は創業者たちが自らのポケットマ
ネーで、US$70millionを出したことでシンプルなものとなってい
る。US40millionは、Winnick自身によるものである。)

Global Crossing社ももちろん競合に直面している。FLAG、
OXYGEN、Genesis、TAT14などである。しかしながら、地域ベル
会社にサポートされている運営会社であっても、海底ケーブルのベ
ンチャーはGlobal Crossing社と競争するには複雑すぎるし、官
僚的すぎる。MCI WorldcomとC&Wの共同事業であるGenesisの
みが、大西洋間で80GBPS(gigabyte per second ---?)を提供し
ている勘定に入れるべきプレイヤーである。FLAGのキャパシティ
はせいぜい5GBPSである。Atlantic Crossingは、40GBPS(80GBPS
までアップグレード可能)のキャパシティを8本擁する予定である。
また、Pacific Crossingは、160GBPSとなる予定である。

現時点で、Global Crossingの時価総額(Market Capitalization)
は、US$6billionであるが、その機会と比較対照すれば、低株価で
放置されていると見るべきであろう。現在、当初払い込み資本の2.5
倍である。一方、同社の顧客は、3.7倍をGlobal Crossingに支払
うことになる。Qwest社の時価総額は、当初払い込み資本の6倍で
ある。

これまで、Global Crossingは、ヨーロッパまで5000kmの光ファ
イバを敷設した。このAtlantic Crossingシステムはすでに利益を
出している。Atlantic Crossingの21%の容量しか販売していない
のにも関わらず、建設費用の75%をすでに回収している。Level 3、
WorldPort、ドイツテレコムなどが顧客である。

98年10月。Global Crossing社は、ヨーロッパ18都市を結ぶほ
とんど地上網の全長7000km、US$700millionのPan European 
Crossingを発表した。WDM技術を用いるこのネットワークはヨー
ロッパ大陸で最大容量の独立ネットワークとなる可能性がある。

Global Crossingの創設者であるGary Winnickの背景。ドレクセ
ル・バーナムでMike Milkenの側近であった頃、MCIの創設者で
あるMcGowanと出会い、影響を受ける。85年にDrexelを退職し、
Pacific Assetsという自身の投資ファンドを設立し、その最初のブ
レークがGlobal Crossing社であった。

Global Crossingは最初のグローバル統合光ネットワークの先駆者
であり、George Gilderが1989年の「マイクロコズム」で予言し
た「ガラスと光りの世界規模のウェブ」(Worldwide Web of glass 
and light)を実現するものである。かつて、Mike Milkenの投資
により、MCI、TCI、マッコーが勃興したが、これらと同様に世界
経済を大きく変えるであろう。

99.01.31 中川一郎




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