川人 博 「過労自殺」



最近、岩波新書もHPで情報を提供するようになった。以下、本書関連のURLである。 http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/43/5/4305530.html

組織に勤めるということのリスクは高いなあと以前から思っていた。「寄らば大樹」しかし、枯れ枝が降ってくるかもしれないし、アメリカシロヒトリが降ってくるかもしれないし、さらにいえば、大樹がのしかかってくるかもしれない。組織のさまざまなミクロ的な局面で、資源の非効率配分もあれば、ひずみやゆがみや無理、無駄、ムラ、誤り等々。当然あるのだ。その最たるものは「過労死」であり、「過労自殺」であろう。

本書は、具体的な事例を通じて、過労自殺は労働災害であるし、また、このような労働災害は、組織のあり方を通じて予防できる。だから、個人としても組織の一員と振る舞うにしても、予防策をとるべきだ。また、行政はより明確に過労自殺が個人に帰するべき問題ではなく、組織、労働によって起因する問題なのだ。

というような主旨のことを伝えています。

★ 身につまされた点 その1

読後何を思ったかといえば。現在の自分の職場のあり方を反省せねばなるまいと勤務先で果たすべき責務のようなことであった。過労自殺の原因たる稼動が、往々にして仕事が一人の人に集中してしまい、その人がいなければどうしようもない状態ができあがり、その中でその人一人が過労の状態となる・・・そういうことはある。よくある。ということであった。

人件費を節減しなければいけないのだろうけれども、マネジメントに関わる人間は、一人の人に集中してしまわないような工夫を「俺だったらこういう形で負荷を無理なく軽減しかつコストを大きくは増やさない」という工夫をしなければいけないのだと感た。

作業にブレークダウンできることは、極力、人材派遣の人にやってもらう。

今の職場では、そういう形での運営を心がけております。これ、もっと強化して、よりtraceableかつaccountableな仕事のやり方というものを徹底しなければいけないと感じた。

★ 身につまされた点 その2

過労状態。でもそこにとどまらなければならない。そういう心情に中年、ミドルほど追い込まれそう・・・ということであった。

日頃、意識して「義理を欠く」。そのような行動を本書では説いていた。このほかに、個人として日頃からやれることはあるわけであり、この他にも「この組織しかない」「この組織でだめだったら自分の居場所も自分の存在意義もない」という強迫観念を相対化できるような工夫が必要なようだ。自分なりに考え直してみると・・・

ともあれ、この本は、組織に勤めるということを通じて経済的価値を実現するしか方法を持たない多くの人が読んで、それぞれ自己流で「セイフティ・ネット」をつくりはじめるべきであるし、また、政治的要求も公然と掲げるという動きにつなげると、リスクが軽減されると感じた。

組織に勤める人。すべてが、被害者、加害者に立ちうるわけであり、一人でも多くの人に読んで、何かを感じ、少しずつでも行動を変えてほしい・・・と思った一冊であった。 中川 拝

980715 中川一郎 




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