B-Week 980504 Good Bye to Fixed Pricing?

インターネットの普及→取引費用ならびに取引情報伝達費用の極小化→完全市場の現出→消費者へのパワー・シフト

これまで、論理的にはそういうことになるんでしょうけれども、実際は必ずしもそういうことは起らない訳であり、世の中やっぱりミクロ経済学の教科書通りには行かないのが常でありまして、そういうことでまあ、何とかいろいろとそれなりに現状も維持されるわけでありまして・・・

と思われていたようなことが実際に起っている。それも急速な拡がりをもって。

Business Weekの98.05.04号において、インターネットとECの普及が、市場における価格決定権を供給者側から、消費者側に移しているという動きに関するSpecial Reportを掲載していた。

市場経済。これが共通ルールであるけれども、市場間の効率性をめぐる競争が行われており、そのなかで、日本の市場が効率性で水を開けられているらしいということであり、日本のビジネスメディアがだまっていたら、さまざまな形で規制撤廃とか業界慣行の打破等を求めて、政治的なアクションに移すことも含めて考えるべき重要問題である。

このSpecial Reportを読みながら、メモをとりました。何らかのご参考となれば、幸いです。

If you are interested in the original of the following memo, you 
might want to refer to 

http://www.businessweek.com/

Nowadays, they require your registration.  I believe that this 
bothersome process is worth if you want to get info related to 
telecommunications industry.

The following is Japanese memo taken while I was reading through 
their special report "E-Commerce Adios, FIxed Prices?" dated on 
98/05/04.

Good Bye to Fixed Pricing?:How electronic commerce creat the 
most efficient market of them all
電子商取引による効率的市場の実現

p59

将来、売り手は特別の取引きを提案するようになる。ある瞬間のあな
たのためにあつらえられた取引き条件である。それは、劇場のチケット、
銀行ローン、そして、カムコーダーに至るまで、多岐にわたる。

今日、この新たな、流動的なプライシングの原形は、インターネット上
で見出される。

かつて、価格を変更するためには膨大な費用が発生した。これを「メニ
ュー費用」という。

洗練されたネットワークは、このメニュー費用と価格変更に要する時間
を限りなくゼロに近づける。

”Bots”というショッピング支援の仕組みがある。MITの経営科学の教授
であるErik Brynjolfssonは、botsによって、「バーゲニング・パワーが
消費者に移転する」とコメントする。

しかし、これは売り手にとって不利なことばかりではなく、企業は以前に
比較してはるかに多くの顧客の詳細情報を入手でき、強力なデータベース
システムによって、消費者行動のための洞察を得ることができ

突如として、売り手は見込み客と直接的なコミュニケーションを実現でき、
個人ベースでターゲットを絞り込んだプロモーションを行うことができる。

MITのスローン・スクールのYanni Bakosは「これは双方に強力な武器を渡
すような、軍拡競争のようなものである。」とコメントする。

P60

電子世界における売り手と買い手が戦闘するにつれて、この闘争の結果は
真の市場価値を反映する価格設定となるのである。「電子商取引の未来が
意味するところは、売り手と買い手との1対1の交渉」ということであり、
「すべてのものについて、個別のスポット価格ができる」ということなの
であると、ネット・オークションの西都であOnsale社創設者のJerry 
Kaplanは、コメントする。

ほんの数百年前まで、人々は靴職人の元に出向いて靴を注文し、1対1で対
面で価格を交渉した。鉄道と運河ができてから、所製品がはじめて広範に
流通させられるようになり、統一価格というものが実現したのである。

ネットによって再度振り出しに戻る。「取引き費用が急激に低廉となり、
すべてのものについて競争入札を行わない理由がなくなってしまったので
ある。IBMの高度商取引研究所のディレクターであるStuart I.Feldmanが
コメントする。

現在、最も一般的に行われているのは、ネットオークションである。

ネット上でのオークションを実施するOnsale社が、3年前にネット上のサ
イトを開設して以来、400万件の入札が行われた。昨年だけで、このサ
イトによる総売上高は、115百万ドルにのぼる。この金額は、1996
年の3倍増となっていOnsale社創始者のKaplanは、以下のようにコメント
する。「突然、消費者が価格設定に積極的に関与しはじめた。これは、無
限の経済的民主主義(economic democracy) だ。」

p61

オークションの対象は広がっている。エネルギーや通信もその範疇に入る。
通話時分や、ガス供給量、電子部品などである。Forrester Researchによ
れば、このような市場が2002年までに、52十億ドルにまで成長するとして
いる。

● ArbiNet社の通話時分取引市場

New YorkをベースとするArbiNet(Arbitrage Network社の略称:創設者は
元商品トレーダーのAlex Mashinsky氏)は、最低コストのネットワーク経
由で通話の経路を設定するための取引市場を創設した。

ほとんどの通信事業者は、最繁時の負荷に対応できるよう巨大な設備を建
設している。問題はその設備容量のほとんどが使用されないままであると
いうことだ。たとえば、AT&Tは、同社のグローバルネットワークの容
量の20%しか使用していない。マージンの減少が著しい厳しい競争市場
において、「余剰設備は、たいへんにセンシティブな問題となりつつある。
」Mashinsky氏は語る。「設備が余剰であるか、否か。それは、お金を得る
か、得られないかの大きな分かれ目なのである。」Arbinet社の取引市場が、
通信事業者の設備容量最適化を実現する。オフピークの時間帯に、低コスト
の通話を自社のネットワークに受容することによって実現するのである。
他にも、長距離通話の通話時分の仲介売買を行う業者はいる。しかし、こ
れをリアルタイムで実現するのArbiNet社のみである。

ArbiNet社の清算ネットワーク(The ArbiNet Clearing Network)は以下の
ように機能する。

− AT&Tのような通信事業者が、ある時点のネットワークの利用可能性
及び価格に関する情報を提供する。
− 通信事業者の顧客は、Arbinetの清算システム(Arbinet Clearinghouse)
を通じて、たとえば、ニューヨーク〜香港間のセキュアな回線経由の通話を
行いたいと意思表示する。
− Arbinet社のパワフルなコンピュータと交換機が、この通話に関する最低
料金の通信事業者とのマッチングを行い、容量を使用できることを確認し、
通話の経路を設定する。
− これらのプロセスが、すべてミリ秒の間に行われるのである。

「私たちは、いつでも利用可能な容量の裁定取引(arbitrage)−−サヤ稼ぎ
−−を実現するのだ」とMashinsky氏は語る。

p62

今日、ArbiNet社のフォーカスは卸し売り、つまり、通信事業者間のビジネ
スとなっている。しかし、2年のあいだに、この市場も消費者を巻き込ん
で実現できるようになると展望している。「スマートな」電話機が、すべ
ての通話について、最もお得な通信事業者を選択するという構造が展望で
きる。これは、大通信事業者にとっては、つらい話である。「大手の通信事
業者はこれをやりたがならいだろう。料金をさらに値切られるからだ。」
Mashinsky氏は語る。

P64

○A Cybershopper’s Best Friend -- 買い物エージェント(Bots)に関する記述。

− Jupiter Communications 社によれば、1997年には、10.3百万の消費者が
ウェブ・ショッピングを実施した。これは、96年の6.3百万よりも大きく伸
びている。

− XMLが導入されるとともに、Botsによる検索とリストアップが一層正確さ
を増す。サイトのデザイナーが、サイト上のデータを定義するためのタグを
作成し、Botsが正確な情報を獲得できるようになる。

− JUNGLEE:AT&TやIBMを含む450社からの求人情報も含むデータベースやウ
ェブサイトを検索する。また、70の小売業者からの製品と価格情報を入手す
る。Yahoo!とAOLとパートナリングを行い、無料でサービスを提供する。売
り上げの何%かのマージンをこれらのパートナーと分ける。

− Excite’s Shopping Search:Exciteのサイトで利用できる。500の業者
から、製品、価格、レビューを引き出す。Netbot社のJango技術を使ってい
る。昨年10月に、Netbot社を35百万ドルで買収したもの。

− AgentSoft:サプライやサブコントラクターとの取引きを比較しながら実
施するためのエージェントを作成できるソフトウェアを供給する。ウェブ上
で4個の試験サービスを提供する。Amazon.comや、Barnes & Nobleのサイト
も含まれる。

98.05. 18 中川一郎

中川が主宰する「ラディカル・マーケティング」メーリングリストに98.05.07に初めて投稿したものに、能書きを若干、加えたものであります。





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