Business Week on Telecom Industry #2 -- '98 Spring



http://www.businessweek.com/1998/14/b3572010.htm

くだんの記事には、さらに、現在の米国の情報通信業界を揺さぶっているさまざまなプレイヤーのトップによるインタビューも掲載していた。それぞれのインタビューから感じられるパラダイム・シフトを推進する人の勢い。ここから学ぶべきことは多いと思われる。

Qwest社のNacchio会長のインタビューは、ドラマチックだ。AT&Tでナンバー3まで登り詰めた男が、志を適えられずしてAT&Tを去る。そして、数年後にAT&Tの収益基盤を根底から脅かす新興通信会社のトップとなる。言葉には洞察があふれている。

以下が中川によるメモである。

In Depth Q&A with Industry Leaders----Q&A with Qwest's Joseph Nacchio

メモ


-Nacchio氏は、Qwest社に加わる以前は、AT&Tのナンバー3であった。


-Qwest社は今、全米に16285マイルの光ファイバを敷設し、ビジネスユーザをターゲットとして、1分7.5セントの長距離通話サービスを提供し、AT&Tと競争している。


○AT&Tを去った理由
-AT&Tの戦略的な方向性が誤っていた。
-自分はナンバー3という幹部であるのにも関わらず、ふさわしい扱いを受けなかった。
-「AT&Tではあたかも小学生であるかのように扱われる。きわめて限定され
た分野について知識を得たりコメントすることしか許されなかいと感じられた。」
−前会長は、自らが引き連れてきた社外の人材ばかりを重視して、生え抜きの幹部はまったく冷遇された。


○Qwest社のコンセプト
-Qwest社は、完全にIPプロトコルに準拠したデータネットワークを構築する企業であり、これはAT&Tとは対照的である。(BW)
-NACCHIOが在籍していた当時のAT&Tは、コアビジネス以外の分野に過剰投資した。肝心のコアビジネスに問題が発生すると、皆驚くだけであった。IPネットワークによるサービス提供に転換するべきか、それとも、旧来のネットワークサービスに依拠するべきかという問いすら発せられることはなかった。
-Qwest社のプロダクトは、高速・広帯域の統合IPネットワークである。
-世界は、回線交換方式のSS7ではなく、IPという新たなプロトコルによって統合された広帯域ネットワークへと移行する。
-Qwest社は、速く動く、ビジョンに忠実である、顧客を理解する、エコノミクスを理解する、技術を理解する、機敏に動くという、起業家の文化を有している。
−帯域はもはや安価なものであり、余剰資源になるパラダイムシフトを前提として、Qwest社は通信産業を捉えている。


○小が大を呑む
-Qwest社の株式は活況であり、このおかげで同社の3倍もの売り上げを誇るLCI社を買収することができた。
-Qwest社がLCIの買収によって得ることができたのは、ディストリビューション・チャネルとバックオフィスの能力向上である。これは、相互補完型の合併であった。


○買収にあたっての基準
-自前で実施するよりも成長を早めることができる。また、エコノミクス的により良い結果が得られる。
-米国でのコアのポジションとのシナジーがある。自社では得られない市場セグメントや未踏の地域に進出できる。
-自らが有していないスキルを手に入れることができる。


○買収事例
-Phoenix社。3万社のビジネスユーザを獲得できた。
-Supernet社。エンジニアと顧客ベースを獲得できた。
-今後は国際的な事業展開を可能とするデータ通信領域に強みのある企業を買収のターゲットとする。


○事業展開のための提携
-CISCO
-Microsoft
-Sun Microsystems
-Pointcast
Qwest社が、光ネットワークとIPを通じて、WAN市場で優位性を確保するうえで、必要な提携を重点的に実施する。


○プライシング
-1分7.5セントという料金設定は、他の長距離通信会社が、1分16セントという料金設定であげているのと同じマージンを得られるように設定したもの。
-そのための低コストを実現できる技術の採用

98.04.25 中川一郎





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