情報通信産業において、大きな構造変化が起っている。既存の電話会社にとって代わる新たな勢力が米国で活躍している。
その大きな構造変化とは、技術的には回線交換からパケット交換への転換、日常的にいうならば回線数=通話用チャネル数ではなく、帯域と処理可能IPパケット数への転換である。トリガーはインターネットであった。
ウェスタン・エレクトリック、AT&Tの複合体が実現してきた回線交換中心のパラダイムがコンピュータ業界によって転覆されようとしている。そして、このような技術による革新をきっかけとした業界再編を実現可能としているのは、米国の市場経済である。
このような状況を鮮烈に伝える記事を米Business Week誌のウェブページで発見した。
以下は、当該記事を読みながら中川がとったメモである。何らかのご参考となれば幸いである。
記事のありかは、
http://www.businessweek.com/1998/14/b3572010.htm
である。
以下が中川によるメモである。
○新興長距離通信会社の料金 −QWEST社 1分7.5セント −IDT社 1分5セント −国際ファクスは、通常料金の65%安 ○新技術−IP統合ネットワーク(Convergence Network) −光ファイバとインターネット技術の融合 −音声、データ、映像等の新サービスを統合NW上で提供 −現在のデータNWが、電話網の役割を果たす。 −新興通信会社の新NWによる音声トラヒックに占めるシェアが 98年は1%に満たないが、2002年には13%に達するとの予測(IDC社コメント) ○新興通信会社の株が人気 −新興通信会社の株価 −− 一株あたり売上高の10倍まで買われる −伝統的通信会社の株価 −− 一株あたり売上高の2倍までしか買われない ○米国通信料金の展望 −長距離通信料金は、向こう2年間でさらに30%低下する。 −国際通信やファクス通信の料金は、向こう2年間で50%低下する。 ○侵食される既存通信会社の売り上げ(IDC調査) − 98年にUS$83billion → 2002年には、US$77billion ○IP統合ネットワーク(Convergence Network)による新アプリケーション −UPS社 宅配便追跡をウェブで提供。クリックするとオペレータと通話できる。 (同一回線により、音声、ウェブの双方を享受できるということ) ○IP統合ネットワークによる音声通信(IDC予測) −向こう4年間で、音声トラヒックの13%、US$24billionに相当。 −97年は、US$700million ○全米の新ネットワークへの移行は、10年から20年で完了する。 ○AT&Tの動き −長距離通信でのシェアが高いゆえに、失うものが最も大きい。 −29%という間接費用が問題。新CEO着任後、18000人の合理化で、22%まで低減。 −光ファイバ+IP網を新たに敷設して、IP統合網への準備。 ○MCIの動き −「Qwest社は真の驚異」(Brewer氏) −設備投資金額の50%のをIP統合網(Convergence Network)に振り向ける ○IP統合網(Convergence Network)の強み −爆発的に増大するデータトラヒックを取り込みつつ、音声トラヒックにも対応 できる点 ○伝統的通信事業者の試練 −既存の回線交換網が桎梏となる。 −既存の回線交換網では、新付加機能開始に2年かかる。IP統合網では、数ヶ月 しかからないので、この時間的な差は決定的。 ○ファクシミリ・トラヒックの動向 −米国の長距離通信トラヒックの8%は、ファクシミリ通信。 −国際通信トラヒックの40%は、ファクシミリ通信。 −IP統合網を擁する新興通信会社がこのトラヒックをねらっており、驚異である。 ○アクセスチャージをめぐる地域通信会社と新興通信会社の利害の衝突 −IPパケットは、データであるゆえに、アクセスチャージが安く設定される。 −アクセスチャージが、ユニバーサルファンドの資金源となっている州では、 音声通信をIPパケットでやっているのだから、音声通信と同様のアクセス チャージとすべき地域通信会社や関係議員のロビーも起こる。 ○WorldcomとMCIの合併 −インターネットバックボーンの50%以上のシェアを掌握 −IP統合網での有力プレイヤーである。
98.04.25 中川一郎