セリフ、そして、芝居


言わずもがなのセリフ

ちぎらずもがなの約束

誰もが一人芝居を続けている

即席の脚本で、演じ始めたら後戻りできない

物心ついた時からその芝居は始まったのだけれど

今、終ってもおかしくはないがとりあえず続いている

その芝居の観客は多い時もあるけれど、おしなべて実に少ない

が、小屋すら必要としないその芝居の数は天文学的であったりするだろう。

ほら、そこでも始まっているし、ここでは、終ろうとしている。

隠すために飾る。

飾る、飾る、飾る、隠すため。

飾る、飾る、とりつくろう、隠すため。

誰もが隠すために飾る。言葉を、衣装を、あるいは舞台装置を。

高層ビルは大道具、ネオンサインが照明で

この都市のあらゆる場所は舞台であって

頭隠して、尻隠さずとは

よく言ったものだが、しかし、

飾る、飾る、飾る、隠すため

たとえ、頭隠して尻隠さずであったとしても

たとえ、真夏の太陽にはすべてお見通しであったとしても

即興で演じられると信じていたのに、

予めすべて整然と膨大でかつ統合された脚本が書かれていたのだとしても

中川一郎、2000.3.12 


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