4.トラヒック

作成:下村先生
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(1)トラヒック理論の基本事項

●呼数
・ある回線群を時刻t1〜t2のT分間調査したところ、運んだ呼量がacアーラン、運んだ呼の平均回線保留時間がh秒であった。この回線群がこの時間帯に運んだ呼数は、呼である。

・最繁時の呼数をC呼、最繁時集中率をPパーセントとすると、一日中の呼数は、 呼である。

●平均回線保留時間
ある回線群を時刻t1〜t2のT分間調査したところ、運んだ呼量がacアーラン、運んだ呼数がC呼であった。この回線群が運んだ呼の平均回線保留時間は、秒である。

●回線数
ある回線群の1時間に運んだ呼数をC呼、その平均保留時間をh秒、回線使用率をηパーセントとすると、回線数は、 で表される。

●出線能率
・出線数がnの即時式完全線群で1時間当たりにそ通される呼数がC、1呼当たりの平均保留時間がh分であるとき、出線能率ηは パーセントで表される。

・出線数nの即時式完全線群において、生起呼量がaアーラン、呼損率がBであるとき、出線能率は、 の式で表される。

●トラヒック量
ある回線群が運んだ1時間当たりのトラヒック量と、運ばれた呼の平均回線保留時間中における平均呼数とは等しい。






●平均待ち時間
・アーランの待ち合わせ式で、ある交換線群の出回線数がn、加わる呼量をaアーラン、平均回線保留時間をh、待ち合わせに入る確率をM(0)としたとき、平均待ち時間Wは で表される。

・呼を1回線の待時交換方式でそ通する場合、回線使用率をρ、呼の平均回線保留時間をhとすると、呼の平均待ち時間は、ρが小さいときはρ×hに比例し、ρが1に近づくと急増する。

●呼量
・ある回線群において、最繁時1時間に運ばれた呼数をN,平均回線保留時間をh時間とすれば、最繁時に運ばれた呼量は、N×hアーランとなる。

・ある回線群において、ある時間帯1時間中に運ばれた呼数をN、平均回線保留時間をh分とすれば、この回線群で運ばれた呼量は、N×h÷60アーランとなる。

・ある交換線群の最繁時において、1時間に運ばれた呼数をC、平均回線保留時間をh時間、呼損率をBとすれば、この交換線群に加わった呼量は、C×h÷(1−B)アーランである。

・一定間隔で測定したある回線群の使用中回線数の合計値を測定回数で割れば、この回線群の調査時間中に運ばれた呼量が求められる。

●総合呼損率
・一つの呼の接続が完了するためには、幾つもの交換機で出線選択を繰り返す場合が多い。生起呼がどこかの交換機で出線全話中に遭遇する確率、すなわち、総合呼損率は、各交換機の出線選択時の呼損率が小さければ、ほぼ各呼損率の和に等しい。

・一つの呼の接続が完了するためには、幾つもの交換機で出線選択を繰り返す場合が多い。呼が経由するn個の交換機の出線選択時の呼損率をそれぞれB1、B2、…、Bnとすれば、生起呼がどこかの交換機で出線全話中に遭遇する確率、すなわち、総合呼損率Bは、1−(1−B1)(1−B2)・・・(1−Bn)で表される。








●アーランの損失式(B式)
・アーランの損失式は、出線数をS、生起呼量をaアーランとしたとき、呼損率Bは、
の式で表される。

・アーランB式は、入線数無限、出線数有限のモデルにランダム呼が加わり、呼の回線保留時間が指数分布に従い、かつ、損失呼は消滅するという前提に基づき、呼損率を確率的に導く式である。

●アーランC式
待ち率の算出に使用されるアーランの待ち合わせ式(アーランC式)は、入回線数無限、出回線数有限のモデルにランダム呼が加わり、呼の回線保留時間分布が指数分布に従い、待ち合わせ放棄呼は無いという前提に基づき、確率的に導かれた式である。

(2)即時式と待時式
●待時式と即時式の比較
・加わる呼量及び出回線数が同じ条件であるならば、待時式の場合は即時式に比較すると回線使用率は高くなる。

・入回線数及び出回線数の等しい即時式完全線群と即時式不完全線群とに、等しい呼量が加わった場合、呼損率は、即時式不完全線群方が大きい。

●即時式
・即時式完全線群において、加わる呼量及び呼損率が同じならば、中継線に両方向回線を使用した場合は、出回線と入回線を別々に設けた場合と比較して中継線の回線使用率は高くなる。

・即時式完全群において、同じ呼損率のときには、出回線束が大きくなるに従って出線能率は高くなる。また、同じ出回線束のときには、呼損率が大きくなるに従って出線能率は高くなる。

・即時式完全線群のトラヒック特性において、呼損率が同じときには、出回線数が小さくなるに従って、出線能率は、低くなる。

・即時式完全線群においては、ある生起呼量を幾つかの完全線群に分割して処理する場合、それぞれの完全線群で同一の呼損率を保つようにしたとき、分割群の出回線の平均使用率は、一つの完全線群で処理するときと比較すると低くなる。

・即時式完全線群のトラヒック特性において、出回線数が同じときは、呼損率が小さくなるに従って、出線能率は、低くなる。
・即時式完全線群において、加わる呼数が同じならば、呼損率を小さくすればするほど、必要な出回線数は多くなる。

・即時式完全線群において、運ばれた呼量は、出回線群の平均同時接続数で表される。

・即時式完全線群における出線能率は、運ばれた呼量を出線回線数で除することにより求められる。

(3)開リンク選択方式
2段(3段)接続リンク方式において、空き出回線とそれに接続できるリンクを選択する場合、空き出回線とリンクとを対にして試験し、全空き出回線と接続できるリンクがないとき、初めて話中処理をする方式を開リンク選択方式という。



(4)トラヒックの計算問題
例題1
ある回線群について50分間トラヒックを調査したところ、表に示す結果が得られた。この場合の呼量は、( )アーランである。
保留時間 100秒 160秒 250秒 300秒
呼  数 8 5 8 6

【解説】
時間の単位を秒に統一して呼量を求めると、

  


例題2
ある回線群について(  )分間トラヒックを調査したところ、表に示す結果が得られた。この場合の呼量は、2.0アーランである。

保留時間 120秒 180秒 240秒 300秒
呼  数 10 8 6 4

【解説】
時間の単位を秒に統一して対象時間を求めると、

   [秒]=44[分]









例題3
ある回線群の午前9時00分から午前9時20分まで及び午前9時20分から午前9時40分までの各20分間に運んだ呼数及び平均回線保留時間を調査したところ、表に示す結果が得られた。この回線群の午前9時00分から午前9時40分までの40分間における呼量は、(  )アーランである。

時  刻 9時00分〜9時20分 9時20分〜9時50分
運んだ呼数 180呼 160呼
平均回線保留時間 160秒 120秒

【手順】
(1)延べ保留時間を求める。
(2)対象時間を求める。
(3)呼量を求める。

【解説】
(1)延べ保留時間=平均回線保留時間×呼数
         =160×180+120×160=28,800+19,200=48,000[秒]

(2)時間の単位を秒すると
   対象時間=40×60=2,400[秒]

(3)呼量=延べ保留時間÷対象時間
     =48,000÷24,00=20[アーラン]

例題4
ある回線群の午前9時00分から午前9時20分まで及び午前9時20分から午前9時40分までの各20分間に運ばれた呼数及び平均回線保留時間を調査したところ、表に示す結果が得られた。この回線群の午前9時00分から午前9時40分までの40分間に運ばれた呼数が30.0アーランであるとき、午前9時00分から午前9時20分までに運ばれた呼数は、(  )呼である。B 440

調査時間 9時00分〜9時20分 9時20分〜9時40分
運ばれた呼数 ( ウ )呼 192呼
平均回線保留時間 120秒 100秒

【手順】
(1)延べ保留時間を求める。
(2)9時00分〜9時20分に運ばれた呼数を求める。

【解説】
(1)時間の単位を秒して延べ保留時間を求めると、
延べ保留時間=対象時間×呼量=40×60×30=72,000[秒]

(2)9時00分〜9時20分に運ばれた呼数をCをとすると、
  120C+192×100=72,000
  12C=5,280
  C=440[呼]

例題5
ある回線群の午前9時00分から午前9時30分まで及び午前9時30分から午前10時00分までの各30分間に運んだ呼量並びに平均回線保留時間を調査したところ、表に示す結果が得られた。この回線群が午前9時00分から午前10時00分までの1時間に運んだ呼数は、( )呼である。

時   刻 9時00分〜9時30分 9時30分〜10時00分
運んだ呼量 18.9アーラン 22.5アーラン
平均回線保留時間 126秒 180秒

【手順】
(1)午前9時00分から午前9時30分までの呼数C1を求める。
(2)午前9時30分から午前10時00分までの呼数C2を求める。
(3)午前9時00分から午前10時00分まで呼数Cを求める。

【解説】
(1)時間の単位を秒に統一して呼数C1を求めると、
C1=運んだ呼量×対象時間÷平均回線保留時間
   =18.9×30×60÷126=270[呼]

(2)時間の単位を小さい方の秒に統一して呼数C2を求めると、
C2=運んだ呼量×対象時間÷平均回線保留時間
   =22.5×30×60÷180=225[呼]

(3)C=C1+C2=270+225=495[呼]





例題6
ある回線群において、使用中の回線数を2分ごとに6回測定したところ、表に示す結果が得られ、平均回線保留時間は2分であった。この回線群の測定時間における呼量は、( )アーランである。
測定回数 1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目
使用中の回線数 13 11 17 15 10 9

【解説】
時間の単位を分として呼量を求めると、

  

例題7
ある回線群において、使用中の回線数を2分ごとに6回測定したところ、表に示す結果が得られ、平均回線保留時間は2分であった。この回線群の測定器時間における呼量が11.5アーランであるとき、4回目における使用中の回線数は、(  )である。

測 定 回 数 1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目
使用中の回線数 16 13 10 (  ) 11 7

【手順】
(1)呼数を求める。
(2)4回目における使用中の回線数を求める。

【解説】
(1)時間の単位を分として呼数を求めると、

    

(2)4回目における使用中の回線数は、
     69−(16+13+10+11+7)=12




例題8
メッセージの平均サービス時間が10秒、メッセージの到着間隔がランダムで、サービス時間が指数分布のオンラインリアルタイムシステムにおいて、メッセージの平均到着数が1分間に24件で、端末機の設置台数が5台である端末局のサービスの平均待ち時間は( )秒である。ただし、平均サービス時間に対する平均待ち時間は、表のとおり変化する。


端末機の利用率 0.06 0.65 0.70 0.75 0.80 0.85
0.04 0.07 0.11 0.18 0.29 0.48


【手順】
(1)呼量を求める。
(2)端末機の利用率を求める。
(3) を求める。
(4)平均待ち時間を求める。

【解説】
(1)時間の単位を秒に統一して呼量を求めると、



(2)端末機の利用率=呼量÷端末台数=4÷5=0.80

(3)表より を求めると、0.29

(4)平均待ち時間=0.29×平均サービス時間=0.29×10=2.9[秒]






例題9
出回線数が20回線の交換線群に12.5アーランの呼量が加わったとき、呼損率を( )とするならば、回線の平均使用率は61.25パーセントである。

【手順】
(1)運ばれた呼量を求める。
(2)呼損呼量を求める。
(3)呼損率を求める。

【解説】
(1)運ばれた呼量=回線数×平均使用率÷100
         =20×61.25÷100=12.25[アーラン]

(2)呼損呼量=加わった呼量−運ばれた呼量=12.5−12.25=0.25[アーラン]

(3)呼損率=呼損呼量÷加わった呼量=0.25÷12.5=0.02

例題10
出回線数が20回線の交換線群に(  )アーランの呼量が加わったとき、呼損率を0.1とするならば、出回線の平均使用率は90.0パーセントである。

【手順】
(1)運ばれた呼量を求める。
(2)呼損呼量を求める。
(3)加わった呼損呼量を求める。

【解説】
(1)運ばれた呼量=回線数×平均使用率÷100
         =20×90÷100=18[アーラン]

(2)加わった呼量をXとすると
呼損呼量=加わった呼量−運ばれた呼量=X−18
呼損呼量=加わった呼量×呼損率=0.1X
(3)加わった呼量は
X−18=0.1X
   X=20[アーラン]



例題11
ある会社のデジタル式PBXにおいて、外線発信通話のため発信専用の出回線が呼損率0.02で5回線設定されていた。1年後、外線発信通話量が2倍になった。このとき、呼損率を一定に保つためには、表を用いて算出すると、最低(  )回線の増設が必要である。



【手順】
(1)当初の呼量を求める。
(2)1年後の呼量を求める。
(3)1年後の出回線数を求める。
(4)増設回線数を求める。

【解説】
(1)表より、呼損率=0.02、回線数=5の呼量を求めると、1.66[アーラン]


(2)1年後の呼量は題意より、1.66×2=3.32[アーラン]



(3)3.32[アーラン]の呼量に対して、呼損率0.02を維持するためには、表より直近上位の3.63[アーラン]を運べる8回線が必要になります。



(4)増設回線数は8−5=3[回線]となります。

例題12
ある駅前に設置されている4台の公衆電話機の利用状況を調査したところ、1時間当たりの平均利用者数が25人であり、利用者が公衆電話機を利用しようとしたとき、すべての公衆電話が使用中のため空き待ちとなる確率が0.10であった。このとき、利用者1人当たりの平均使用時間は、表を用いて算出すると、約( )分となる。



【手順】
(1)呼量を求める。
(2)平均使用時間を求める。





【解説】
(1)表より、n=4、M(0)=0.10のときの呼量は、1.65[アーラン]になります。



(2)時間の単位を分として平均使用時間を求めると



例題13
ある駅前に設置されている5台の公衆電話機の利用状況を調査したところ、1時間当たりの平均利用者数が70人であり、利用者が公衆電話機を利用しようとしたとき、すべての公衆電話機が使用中のため、空き待ちとなる確率が0.15であった。空き待ちとなる確立を0.01以下にするには、表を用いて算出すると、最低(  )台の公衆電話機の増設が必要となる。2



【手順】
(1)呼量を求める。
(2)空き待ちとなる確立を0.01以下にしたときの公衆電話機の台数を求める。
(3)公衆電話機の増設台数を求める。


【解説】
(1)表より、n=5、M(0)=0.05のときの呼量を求めると、1.91[アーラン]になります。



(2)1.91[アーラン]の呼量に対して、M(0)=0.01以下にするためには、直近上位の2.30[アーラン]を運べる7回線が必要になります。


(3)公衆電話機の増設台数は、
   7−5=2[台]













例題14
ある図書館で図書を探すため、検索用端末操作に1人当たり平均4分かかる。検索用端末の利用者が1時間に9人現れ、検索用端末が2台設置されているとき、使用中のため、端末の空き待ちとなる平均待ち時間は( )秒である。図を用いて算出せよ。


【手順】
(1)呼量を求める。
(2)使用率(a/n)を求める。
(3)平均回線保留時間(W/h)を求める。
(4)平均待ち時間を求める。

【解説】
(1)時間の単位を分に統一して呼量を求めると、

    
(2)a=0.6、n=2より使用率を求めると、
回線使用率=0.6/2=0.3







(3)図より、n=2、使用率=0.3の場合の平均回線保留時間(W/h)の値を読むと0.1になります。

(4)時間の単位を秒にして平均待ち時間を求めると、
平均待ち時間=W/h×h=0.1×4×60=24[秒]

例題15
出回線数が5回線の交換線群に1時間に加わった呼数が( ア )呼、呼の平均回線保留時間が160秒のとき、この交換線群の平均待ち時間は、図を用いて算出すると、3.2秒となる。A45






【手順】
(1)平均回線保留時間(W/h)を求める。
(2)使用率(a/n)を求める。
(3)呼量を求める。
(4)呼数を求める。

【解説】
(1)平均回線保留時間(W/h)=平均待ち時間÷平均回線保留時間
              =3.2÷160=0.02
(2)図より、平均回線保留時間(W/h)=0.02、n=5のときの使用率(a/n)は0.4になります。


(3)呼量=a/n×回線数=0.4×5=2[アーラン]

(4)時間の単位を秒として呼数を求めると、

[呼]







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