腕時計について






非限定趣向2002.1
いろいろ書いているが、僕が腕時計に凝っているのは最近2年くらいである。それ以前は、1985年・中学入学の頃に買ってもらったリコーのダイバーズ(クォーツ。自転車に乗っててスクーターに衝突されてから浸水し不動)に始まり、ありがちなシチズンあたりのクォーツ(なぜか時計は皮ベルトに限る、と皮ばかりだった。おかげで2年くらいで皮が汚くなる)を転々とし、最後はシチズンのマイ・クリエイションという、時計のタイプを選びダイヤルの画像データを送るとその通りのがでいるというオーダーメイド時計を使っていた。そんなこんなで、一言で言えば、時計にはそれほど興味が無かった。
と、時計歴の浅い自分が言うのは恐縮だが、時計については、趣向を限定しない方がいい。これは時計に限らず、趣味全般、もっと言えば仕事を含め生活・人生すべてに言える。これだけHPで、あれはいいがこれはダメだ的発言ばかりしている自分が言っても全く説得力はないが、今この瞬間はそう思う。
初期の時計ファンが陥りやすい過ちというのは、

1.ロレックス至上主義:デイトナを頂点とする、スポーツロレックスを中心としたロレックスがいちばん偉い。歳とって金があれば当然バブルバック。金がなくて若い僕はまずエアキングから。でもエクスプローラー1に似たブラックダイヤルだ。等
2.自動巻き(オートマチック)至上主義:時計はやはり自動巻きに限る。電池式(クォーツ)は電池供給がなくなれば終わりだし、何年かして壊れたらもう回路が無いから直せない。その点、自動巻きは時計職人がいればいつの時代でも直せる。できればマニファクチュールがいいけど、お金がないからETAでもいいや。いつかはパテック。手巻きは…毎日巻くのが面倒だなぁ。等
3.外国ブランド至上主義:日本の時計なんてカッコ悪いし魅力無い。だいたいマトモなのはGS(グランドセイコー)くらいしか無いんじゃない?それでも、国産時計に15万以上出すなんて右翼ぢゃない?それならカルティエかブルガリでも買うよ。等

というあたりか。僕の性格にしては、時計についてはわりと寛容であった、これでも。だからもちろん、上記のような事はやってきたけど、例えば80年代のカシオあたりのデジタル時計が好きなもんでそういうのも買うし、最近はGSが1本欲しくてたまらない。時計はこうでなくてはいけない、みたいな事をしていると、趣味の対象が限定されちゃって、その分楽しみが減る。道は狭めるよりも、広げておいた方が進みやすい。こうでなくてはいけない、なんて事は無い。時計に限らず、すべての事について、こうでなくてはいけないという事はない。自分の感性が良いと思えば、それはその時点では良い。後でイヤになったら、離れればいい。でも趣向を限定しなければ、あまりイヤになる事もないだろう。いろいろ見れれば客観的になり、全体において自分の持つ時計や、趣向の位置がわかり、今後の趣向がまた広がる。


腕時計とは2001.12
僕は腕時計マニアだろうか。自信がない。マニアというほど人より情熱を注ぎ、精通してるか、しかも普通の人相手でなくそっちの人相手に、というと自信がなくなる。ファン、と言い換えてもいいかもしれない。いかにしてそうなったかを考える。
誰でもそうだが、趣味というものは移り変わり、また循環する。僕の場合はパソコン、バイク、釣り、漫画、アニメ、なんていう、多くはいわゆるオタクがやるような事をやってきて、そこそこに飽きていた。そこである程度意識的に、今度はこれをやってみようかみたいな、ちょっとイヤラシイ考えもあった。具体的なきっかけは、たまたま1本買ったことから始まる。そのたまたまの1本はタグ・ホイヤーであった。現行で一番安いタグ・ホイヤーである。


ロレックスについて2001.12
2000年は腕時計の小さなブームだったのかもしれない。一時は腕時計雑誌や特集がどんどん出てきていたが、今は少し下火な感じがする。それでも雑誌の特集は、ほとんどがロレックスである。なぜこれほどまでに人気があるのか。
人気の理由は性能ではない。ほとんどがブランドイメージによるものである。
まず性能を検討すると、廉価なAIR KINGおよび、一般的なモデルであるOYSTER PERPETUALではデイト無しのただの3針の時計である。DATEやDATE JUSTは文字通りデイト付き。やや高級なDAY DATEも文字通り日付と曜日が表示されるだけ。DAYTONAのみクロノグラフである。別段高機能ではないが、むしろそこがシンプル・堅実ともいえる魅力となっている。では目に見えない機構については、僕はあまり詳しくないが、特別に優れているというわけではなさそうである。防水時計としては世界初だそうだが、自動巻機構は優れているものを開発したものの、世界初ではない。ブランドイメージを強化するものとして歴史を挙げるならば、ロレックスはむしろ後発メーカーで1905年創業。因みにオメガは1848年である。例えば、ブレゲは1775年、マリーアントワネットに依頼されて懐中時計を作ったとかいうレベルであるから、ロレックスは歴史的には全然すごくない。ただ、売り方がうまかったせいで100年たらずでここまでブランドイメージを確立してしまっただけである。
ブランドイメージとは安心感と高級感である。安心感とは飽きにくい、モデルチェンジを繰り返して陳旧化しない、ということ。実際には3〜5年に1度はオーバーホールを必要とするが、使用している限り、自動巻時計は半永久的に動き続ける。だから、ある程度頑丈で壊れにくいということも安心感には重要である。そして壊れる前に、また壊れてもしっかり修理してくれることも必要である。うまい具合に、これらはまさにロレックスがやっている事である。高級感とは、値段が高くて陳腐化しない、新品で買ったときのすごさ・偉さが持続しているというステータスである。現実的には、中古でも値段が下がりにくい・場合によっては上がってしまうということで、数値化もできてわかりやすい。意識して品質を上げることはできるが、高級感を出す事は難しい。しかしこれも、ロレックスはやってしまった。電車の中とかでも比較的よく見るような、別に珍しくもないロレックスの腕時計がいかに高いかは、ちょっとお店を覗けばよくわかる。中古でもほぼロレックスだけ別枠の値段で、新品も中古も、ロレックスの商品だけで店がやっていける。偽物も多く、便乗商品(似てるけど別モノですといったもの)もほとんどがロレックス系である。(これについては後述)

ロレックスは確かに悪い製品ではなく、むしろ良い製品で、新品の定価に関しては、高いにしても異常に高いというほどではない。しかし実際には、一部の製品では定価以上でしか売ってない・中古でも定価以上といった異常な現象があたりまえになっている。全体として、自分からすると実体価値以上の値段に思える。1960年代以前は、ロレックスの製品もオメガと同等の値段であったが、高級感を出すためにある時期を境に値段が上がったそうだ。それによって得られたもの、また逆にそれでも売れるのはブランドイメージと人気による。永遠にブランドイメージを維持することは不可能と考える。ならば、いつかロレックスブームが過ぎ去って、ロレックスバブルは崩壊するだろう。日本でロレックスが世間に知られはじめたのはおそらく70年代後半から80年代初頭であるから、ブームは20年、でここ数年がピークである。それが下降し始めた。これから急峻に、遅くとも今後20年以内に(十分長いか)、ロレックスの価値は定価程度に下がる。2020年あたりか。経済成長が活発になれば、他の投機的商品が増えてみんなロレックスには見向きもしなくなるのではないか。
僕が言いたいのは、ロレックスを買うなということでは決してない。投機的だったら失敗するだろうし、人気やステータスとして買うなら見る目がない。人気じゃなしに自分がどれだけそれを気に入っているか、その価値と売価が離れてないかを考えてから買って欲しい。といっても、自分も以前はロレックスのみ最高で他のは雑魚、ロレックス買わなければ意味がないと思っていた。しかし例えば旧デイトナのムーブメントは、ゼニスからエル・プリメロを買って改造して乗っけてたとかいう事を知ると、なんだ最高じゃないじゃないかと気づいた。で今はゼニスを持っている。値段はデイトナの数分の一である。恐ろしく良心的な商売だ。自分はこの商品を買ってそれを支持する。

人気商品には、必ず偽物・便乗商品が出現する。後発品は廉価であるため同じ機能ならよしとするか、オリジナリティを重視し真似を嫌うかは個人の好みであろう。ロレックスも例外ではない。
まず偽物というのはロレックスではないけどどこまでもロレックスのふりをする製品、便乗商品というのはロレックスに似ているが、ロレックスとは関係ないというスタンスをとる製品、と定義する。ロレックスほど偽物および便乗商品の多い商品はないだろう。偽物というのは、香港を始めとしてアジアの街の目抜き通りでは必ず売っている、ロレックスにしては一桁安いなぁという製品。これは買って帰ると税関で取られてしまう。公式には認められてない、裏商品である。偽物にもいろいろなレベルがある。よくあるのは、日本や海外の中古屋で買ったら、ケースやブレスは本物だが中身はロレックス製ではなかったというもの。こういうものは、例えば日本ロレックスにオーバーホールに出しても、何の問題もなく帰ってくるものがある。日本ロレックスとしてはあえて偽物である事を指摘しない事もあるという。本人がわからず、そのつもりで使っていればいいではないかということか。本物だ偽物だで波風立てないという意味でも、あえて親切に教えてあげる義務はないかもしれないが、後で気づいたらユーザーはどんな気持ちになるだろうか。ちなみにオーバーホール料金は3〜5万、デイトナで6万程度であるという。純正品なら2年以内は修理無料、オーバーホール料金も半額になるという。この半額というのは2年以降でも、という事らしい。ここでいう純正品というのは、いわゆるデパートで買ったロレックスの事をいう。モンデール銀座とかエバンスとか、ロレックス専門店というのはあるが、正規代理店ではないので、売っているのは並行輸入品である。これに対し、デパートで定価で売っているものは日本ロレックスの純正品であり、裏蓋にはその旨シールが貼ってある。だから、もし自分が買うならロレックスは純正品に限る。並行輸入品は、新品であっても偽物の可能性が否定できないし(この2店でも偽物が売っている、という噂を聞く)、サービス料金も高くつく。それをうめるために、ロレックス専門店では修理やオーバーホール無料などといったアフターサービスの充実に努めているのである。因みに、オーバーホール料金を他社と較べると、2〜5割増しで日本ロレックスは高いと思われる。






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