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[2002-02-11 新聞 第11号より]


    小野寿弥さん
1983年の初夏
予告もなく悪魔が
突然、襲いかかって来た
奇跡的に命は助かったものの
その悪魔が俺を
長い夏眠に誘った
素直な俺は誘われるままに
夏眠に入った

それから半年後(のち)に
やっと夏眠から覚めたが
俺を待っていたのは
気が遠くなるほどの
長い入院生活だった
トラック運転手だった俺は
事故で手・足が動かず
言葉も奪われた

それでも俺は
またワッパ(ハンドル)
回しをするのだと
望みを捨てず顔で笑って
腹で泣いて入院生活を過ごした
リハビリに行っても
トレーラーの運転手として
出来るだけ早く復帰するために
トラック雑誌を購入
厳しい訓練にも頑張ったが
世の中は甘くなく
奇跡は起きなかった

浦安市の福祉センターで
知り合った身障者に勧められ
プロの文学家を目指したが
天使はこんな俺を捨てずに
千葉日報の千葉児童文学賞の
入選候補に入った

そして第一回ルパン文芸賞
トレーラー運転手と文学では
180度違うが、ま、いいか
医学の進歩を信じて
ワッパを握れる日が来ると
願って小説に懸命な
俺なんです


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