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[2002-12-12 新聞 第12号より]

 J あれは拉致未遂? 

 
「何か初めからいや〜な予感がしたのよね」
 中学時代からの親友が二十数年前の夏の夕方、知人の女性と二人で海岸でのある集会に参加した時の印象である。
 日も暮れかかった頃、彼女と知人の二人は「クルーザーに乗らない?」と誘われた。一人じゃないし、断れる雰囲気でもないしと、気が進まないまま何となくついて行った。
 しかし岸にはクルーザーとは名ばかりの、ボートより少し大きい船が止まっている。
 彼女を大きな不安が襲った。 「これに乗ったら帰れなくなる!」
 そして彼女は逃げた。その恐怖は言葉では表現できないほどのものだった。
 私は高校まで新潟で過ごした。むこうに佐渡が浮かび、そのむこうに朝鮮半島、そして中国大陸。冬の日本海、夜の海の暗さは足元から体の全てがすくい取られていくような恐怖を感じる事もあった。
 親友のあの出来事は拉致未遂? だとすれば、彼女は家族を失い、人生も断ち切られていたかも知れない。そして私は行方不明の親友を探していたかも知れない。
 彼女がもしボートに乗っていたら、自分の意思で北朝鮮に渡ったという事にされてしまったのだろうか?  最近の拉致事件のニュースを見ながら、そうは思いたくないがやっぱりそうだったんじゃない? と背筋に冷たいものが走る。
 だって同じ頃、横田めぐみさんがいなくなったあの寄居浜での出来事なのだから。
以津子   

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