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[2002-12-12 新聞 第12号より]

サッカーワールドカップの共催、日本人拉致問題等、最近の朝鮮半島は数多くの問題をはらんでいる。 韓国に行った会員三名が旅の印象などを語った。
  • 出席者:
    • 宮原靖代(主婦)
    • 坂井昌子(船橋市文学賞で佳作)
    • 岡本一正(「金嬉老の真実」の執筆者
       ペンネーム=阿部基治・司会


岡本一正さん


宮原靖代さん

坂井昌子さん

  ・近い国にするための努力を(宮原)
  ・南北統一が出来たら繁栄(坂井)
  ・在日韓国・朝鮮人の差別は事実(岡本)

韓国とは...
 岡本 皆さんに何回くらい韓国へ行き、そのときの印象はどうか、ということから伺いたいのですが。
 坂井 私は、目的は観光とエステですね。言葉は違うけど、日本人に似た顔が多いし、親近感がもてました。
 宮原 私は一回だけ、観光とエステを目的に行きましたが、ソウルの街を歩いて、そのエネルギッシュなことに驚きました。もっともタクシーがエネルギーがあまりすぎてて、神風タクシーなのには困りましたが...。
全体的に、今まで知らなかったというより、見ようとしなかった世界に飛び込んだかんじがしました。
 岡本 私は本を書く取材のために五回行ったのですが、隣の国なのに、食べ物、言葉や習慣などがかなり違うので、なぜこんなに違うのかと思いました。 取材先では、わざわざ日本から来たのかということで歓迎され、嫌な思いはしませんでした。
 宮原 著作の「金嬉老の真実」を書かれるためですか?
 岡本 それもありますが、その前に「贖罪」という本を書いて、それも最後の舞台が韓国だったので、五回も行くことになって。
 坂井 金嬉老の印象は?
 岡本 ちょっといかつい感じでしたが、頭の回転が速いのと、ナイーブな面を持っているな、と感じました。
 宮原 どこに魅力を?
 岡本 彼が寸又峡の事件を、民族差別を訴えた有名な事件にしたのは、その話術にあったと思います。大きな声で、説得力のあるしゃべり方をします。 それが彼の魅力と言えるかもしれません。
ところで、私の話ばかりではなく、韓国・北朝鮮の現状を見ていてどんな問題を感じられているか伺いたいのですが。
 
現状の問題点...
 坂井 韓国・北朝鮮ともに、先進六ヵ国に、少しでも早く追いつきたいという気持ちが強すぎるような気がします。そのため中味が伴わないのに無理をしたり…。
北朝鮮では、ミサイルなどはどんどん作るのに、いつも食糧不足に悩まされているようだし、韓国でも橋が落ちたとか、デパートが崩れたとかいろいろありましたが、中味の充実が先じゃないかと思います。
 宮原 日本に負けたくないという気持ちは、すごく強いと思います。サッカーのときにも、そう感じました。
 岡本 それは、日本と朝鮮半島との過去の歴史から見て、当然だと思います。
三十六年間の日本の植民地支配が、そこに住む人々の生活を大きく変えたわけだし、それが日本への対抗意識となって、日本に技術でも、スポーツでも、何でも負けたくない、ということにつながっていると思います。
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差別問題は...
 坂井 寸又峡事件のときの民族差別問題は、その植民地支配の時代の名残だったわけですね。
 岡本 恥ずかしい話ですが、在日韓国・朝鮮人を差別してきたことは、事実です。最近は、かなり減ってきたと思いますが…。
 坂井 植民地支配のせいか、旅行に行ったときも、お年をめした世代では、日本人にいい印象を持っていない方が多いと感じましたが、ワールドカップのときくらいから、若い世代を中心に、本当の隣の友人という形になってきたと思います。
 宮原 いまの若い世代は、植民地支配の内容など、少しは学校の授業で勉強しているでしょうが、中味をよく知らないから、つき合うのに何の抵抗感もないのでしょうね。
 岡本 日本ではよく知らないのに、向こうでは授業できっちり教えているので、認識の差が出ています。
やはり、正しい歴史を学んでいないと、問題を根本釣には解決できないと思いますよ。
 坂井 ところで、金嬉老元被告が罪犯罪に走ったのは、差別を受けたことと、幼いときの貧困に原因があると思いますか?
 岡本 影響がなかったとはいいませんが、それがすべてとは思いません。現に彼の姉妹、弟は立派な社会人になっていますし、あくまで彼個人の性格の問題でしよう。
 宮原 金嬉老元被告は、民族差別を訴えたということで、ブサンでも英雄扱いされたと聞いていますが、そのことで対日感情に変化が見られましたか?
 岡本 変化が起きたというよりも、金娃老自身が、韓国の人たちに「もっと日本と仲良くなれ。日本に負けないように頑張れ」と言っていたのが印象に残っています。その意味では、在日韓国人だった金嬉老元被告がそういうのですがら、対日感情はよくなる方向にあると言えるかもしれません。
 
近い国をより近くするには...
 宮原 朝鮮半島は、近くて遠い国とよくいわれますが、もっと近い国にするためには、日本人も努力しなけれぱなりませんね。
 坂井 同感です。ワールドカッブの前に韓国に行ったとき、ソウルから特急のセマウル号に乗ったら、日本語の案内アナウンスがあったのでびっくりしたのですが、あれは前からですか?
 岡本 いやいや私が七年前に行ったときは、日本語なんかとんでもない、ハングルと英語だけです。 列草の中で日本語を話すのに、声を小さくした覚えがあります。対日感情がよくなくて、食堂で通訳と日本語で話していたら、隣にいた韓国の老夫婦が席を遠くに変えたくらいです。
 宮原 でも、それが日本語のアナウンスが入るようになったのですから、韓国としても、ずいぷん努力しているわけですね。
 坂井 最近はワールドカッブのせいか、日本でも案内表示板に、英語・ハングル語。中国語と並んで書いてあるところも多くなりましたね。
 岡本 まさにスボーツに国境は無いということですね。ワールドカッブは、日本と朝鮮半島だけでなく、アフリ力大陸もヨーロッパも、みんな日本に近い国にしてくれましたからね。
 宮原 試合が始まる前の練習場が、地方の村だったりしたのが、よかったですね。
 坂井 そうそう、中津江村では何日も遅れて来て大騷ぎだった。
 宮原 そんなことが、国の間の友好を深めるのよね。
また金嬉老元被告の話に戻るのですが、今度奥さんになった朴善煕さんが、前夫からだいぶ虐待されていたようですが、韓国では女性の地位が低いのですか?
 岡本 男尊女卑の考えは、日本よりかなり強く残っていると思います。儒教の教えが強く残っているせいでしよう。ですから、年上の人への絶対服従の慣習も強く残っています。例えば四、五人いて、一番年少の人がたばこを吸いたいと思ったら、年長者の許可を取るか、年長者の人がたばこを吸ってからでなけれぱ、吸えません。
私の通訳をしてくれた若い男性が、最初、たばこを吸うのに私に許可を求めてきたので、びっくりしました。そのときにこの風習を聞いたのです。
 宮原 日本ではもう薄れてしまった年上の人を大事にする考えが、まだ残っているのですね。私にはうらやましい話し(笑)
 
親切が理解につながる...
 岡本 その代わり、グルーブで飲食したときには、一番年長の人が勘定を全部負担するのが、原則です。ですから、いつも私が会計担当でした。(笑)
 宮原 その風習は遠慮(笑)
 岡本 私は、ソウルの地下鉄で中年の女性に席を譲られたのですが、初めての経験でした。
こうした何かのきっかけでもいいから、隣りの半島と仲良くしたいと思いますが、未来はど うなっていくと思いますか。また、どうすべきだと思いますか。
 
どうなる未来...
 坂井 朝鮮半島の南北統一ができたら、韓国というか朝鮮というか、国全休がもっと繁栄していくのではないでしようか。
もっと底力がついていくと思うのです。いまは南北ともに、外側に目を向けている部分が多い気がします。それが力を蓄えられない理由の一つになっていると思うのです。
 宮原 観光でもいいから、お互いに相手の国へ行けば、必ず理解が深まると思います。行かずに、ロ先だけで言っていても、仲良くなることはできないと思うのです。浦安は、東京ディズニーリゾートがあるから、たくさんの観光客が見えていますが、来られたからには、お土産品だけでなく、日本、あるいは日本人に対する様々な印象を持って帰えられるはずです。小さくともこれが大事だと思います。
 
小さくとも...
 岡本 日本は民間レベルで機会を作っていくべきです。
例えば観光にしても、技術提携にしても、政治が絡むと難しくなって先に進みません。小さなことでも、ひとつずつ理解し、協力することがあれば、相互理解に結びつくと思っています。 ディズニーランドでも、道に迷った観光客を親切に案内すれば、大切な役割だと思うし効果は大きいと思いますよ。
 坂井 偉い人の息子さんも来たようだが、親切に案内すると違うでしようね。(笑)
私は、日本ももちろんそうですが、もっとお互いに歩み寄るべきではないかと思います。拉致問題も、妥協するということではなくて、話し合える土俵を作らないとどうにもならない。
 宮原 その土俵作りが課題ね。
 岡本 なんのかんの言っても、韓国は隣国なんですから、まずお互いが知り合うことから始めないと…。エステでもなんでもいいですから、まず、行ってみないことには…。
 坂井 裸の付き合いから始めようというわけですか。(笑)

注:金嬉老事件
一九六八年二月、在日韓国人・金嬉老元被告は暴力団関係者の借金取り立てに追われ、二人を殺害。民族差別を訴えたが裁判で無期懲役。二四年後に仮釈放で韓国に渡り、そこで女性関係で殺人未遂、現在刑務所。

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