小網代の森を守る会


kanban

 イルカ丘陵がジャンプする起点になる小網代。私たち小網代の森を守る会では、2ヵ月に一度、季節に応じた一番良い日を選んで、生き物の観察や、干潟のクリーン活動を中心にした自然観察会を行っています。

1.小網代の森はどんなところ?

 小網代は、三浦半島の先端近く、京浜急行三崎口駅からほど近いところにある、面積わずか100ヘクタールの小さな森です。三浦半島と聞くと、緑が豊かで、自然の森がたくさん残っているというイメージがあるかも知れませんが、航空写真でこの地域をみると、これだけの規模の森が、ひとまとまりに残されているところは他にはありません。

 森の中には、浦ノ川という、長さ1.2キロくらいの小さな川が流れていて、およそ1時間ほどで、源流付近から河口まで、谷間の湿地を歩いて移動することができます。

 森を歩いてみると、次から次へと景色が移り変わっていくことに驚かされます。上流部は、コナラやサクラ類を中心にした雑木林(かつて、薪や炭を採るために使っていたようです)が尾根に広がります。

 そして、中流域に入ると、ハンノキやハンゲショウなどの湿原があらわれます。浦の川の流れが作った「山あいの湿地」といった感じがします。夏の中流での主役は何といってもトンボです。特に川沿いには、ヒガシカワトンボの姿が目立ちます。オニヤンマをはじめとするヤンマ類の種類も豊富です。

 下流域には水田の耕作をしていたあとが見られます。今は一面のアシ原になっています。海も近くなってきているため、山の生きものたちと海の生きものたちが出会う場にもなっているよです。ここで特徴的なのは、道の両側からまるで行く手を塞いでしまうかのように成長したササのトンネルです。小さな子どもはそのまま進むことができますが、大人は腰をかがめてくぐらなければいけないので、「トトロのトンネル」と名前をつけました。大人も子どもも大喜びの、とても不思議な空間です。

 終点は、干潟。森に降った雨が木の幹を伝い、土に入り、そして、地面にしみだします。いく筋もの小さな流れがやがて一つになって、森の養分をたっぷりと含んで、その養分を川の出口に落とします。それがこの干潟です。干潟にたまった有機物は、ゴカイや貝、そしてたくさんのチゴガニやコメツキガニの栄養となります。干潟は小網代の生きものたちの賑わいをささえている、とても大切な場所なのです。生きものを育み、そして海へ注ぐ水を浄化してくれている干潟。残念なことに他の場所ではどんどんその姿を消してしまっています。

 1本の川を軸にして、森と干潟と海がひとつにつながったひとまとまりの「集水域生態系」がここには残されています。次から次へと移り変わる景観を、この森を賑わす多くの生きものたちが作っているのです。

2.小網代の生きものたち

森を象徴する生き物がアカテガニです。TV番組などで「アカテガニの住む谷」と紹介され、全国的にも注目を浴びるようになりました。このカニは普段は、山の斜面などに巣穴をつくり生活していますが、夏の大潮の晩になると海まで移動してきて、お腹に抱えた子ガニを放します。もしも、森の中に1本の道路でもあれば、そこでカニは移動できなくなり、子どもを産めなくなってしまうのです。こんな小さな森であっても、何も横切るものなく上流から下流まで、つながって残っているということが重要なのです。

 アカテガニ以外にもたくさんの生きもたちがこの谷を賑わしています。慶応大学の岸由二氏らによる1993年の調査によると、草や木、シダ、昆虫、エビ・カニの仲間、鳥、哺乳類、、現在のところ実に、1300種以上の生物種が正式に確認されました。たくさんの生きものを育むことができるということは、それだけここの環境が豊かであるということを意味します。豊かな環境に生物の多様性が支えられているのです。

3.小網代の森を守る会の活動

 豊かな生態系が残されている小網代ですが、あるとき、この森にゴルフ場開発の計画が持ち上がりました。こんなに貴重な集水域も、まだ保全されている場所が皆無の状態なのです。生き物たちの賑わう谷が、一面の芝生に変わってしまうことは大きな損失ではないか。そんな意見を持つ市民たちがいくつかの団体を経由して「小網代の森を守る会」を発足させました。

 私たちの願いは、この森をできれば「自然教育園」のような形で守っていき、次の世代へ受け継いでいくことでした。しかし、ただ「自然を守ろう」というだけでは、何の解決にもなりません。実際に地主の方がたくさんいらっしゃり、莫大な金額がかかることなのです。そこで、私たちは、神奈川県が行っている「かながわトラスト運動」を応援することにしました。小網代を好きになってくれた人にお願いし、「トラスト会員」になってもらうのです。一人一人の声は小さくても、たくさん集れば、大きな声になります。

 ただ、そのようにして多くの方に小網代の存在を知ってもらい、保全へとつなげていくことは良いことなのですが、困ったこともおきました。それは、小網代が有名になりすぎて、ここの自然や、アカテガニの放仔(お産)を見学にたくさんの人が訪れるようになったことです。

 伝え聞いた情報だけで、気軽に森に入る人がいます。公園として整備されているわけではない小網代には、長靴が必ず必要です。でも、ふつうの靴でやってきて、湿原を踏んでしまいます。お産にやってくる母ガニはとても緊張して、デリケートになっているのに、平気でライトを照したり、道をふさいだりしてしまいます。

 そこで会では、「フィールド・スタッフ」を会員から募り、「カニパト(カニパトロールの略)」などの形で、会の活動に参加してもらうことにしました。

 フィールドスタッフは、森を訪れた人たちに自然のことをよく知ってもらい、マナーを守った観察をしてもらうように説明することが、その仕事です。1995年から研修を続け、森の自然のことを学び、守る会が取り組んできたことを分かちあってきました。将来的には、毎日曜日にスタッフの誰かが、森や干潟にいて、ここを訪れた人のお世話ができればいいなと考えています。

 1995年の11月と、12月にはその準備として、日曜日と祝日に交代で森に入り、「道パト」を実施しました。今まで、森の案内図がなかったので、この機会を使って、森の「絵地図」作りに取り組もうという試みで、96年春に完成しました。

 1998年には小網代の森の保全を願う団体がネットワークを組み、小網代野外活動調整会議を組織しました。小網代の森を守る会もその一員として、道パト、花パト、カニパト、アカテガニビオトープ整備などの活動を積極的に推進してきました。2005年にNPO法人小網代野外活動調整会議が設立された後も、連携ネットワークに参加し、協力しています。

 また、学校教育の場として、森を利用する機会も増えてきました。安全に子どもたちを案内し、森の面白さを伝えるために、森案内「虎の巻」も作り、フィールドスタッフで共有しています。子どもたちと一緒に森を歩くことは私たちの大きな喜びです。

 さらに森をよく知るために、2006年からは森の講座も始めました。春の花編、秋から冬の道編、それぞれ毎回何かしら新しい発見のある、楽しい講座です。

4.小網代の今後の姿

 私たちの保全活動も一歩ずつ前進して、多くの人が小網代を支援して下さるようになりました。そして、何よりも嬉しいことに、神奈川県が保全に向けた方向で、努力をするという内容のことを正式に表明しました(1995年3月28日/神奈川新聞)。面積72ヘクタールと森のすべてではありませんが、十分評価できるスケールであると考えています。

 守る会では「小網代・自然教育圏構想」を県に提案しています。小網代の自然を大規模に保全し、環境教育や、地元三浦市の振興にも活用するため、森の南の谷の一部に、教育型リゾート施設を設けて、自然教育や自然享受型レジャーの拠点にしようという提案です。また、中央の谷(浦の川に沿った谷)も最小限の施設整備をして、フィールドスタッフを配置した自然観察が可能な場所を設け、それ以外のエリアは「厳正保全域」として自然を残していきたいと考えています。

 小網代の森は2005年9月に約70ヘクタールが近郊緑地保全区域に指定されました。神奈川県が保全計画を策定し、土地の買い入れを進めています。今後、どのような形で森が保全されていくのか、動向を注視していきたいと思います。

5.今年度の会の活動

以上の紹介をご覧になって、小網代の森に興味をもった方は、ぜひ守る会主催の「観察会&クリーン」にご参加下さい。2009年の「観察会&クリーン」の日程は以下の予定です。(日程、テーマ、変更の可能性があります。直前にご確認ください。)

    2009年4月29日(祝日)春の花

    2009年6月 7日(日)干潟のカニ

    2009年8月 8日(土)夜のアカテガニ放仔観察(予備日22日)

    2009年10月4日(日)秋の草花

    2009年12月6日(日)森の道

  いずれも、午前10:00に京浜急行「三崎口駅」集合。
  (放仔観察会のみ夕方16時集合)
  長靴、昼食を必ず持参。雨天中止
  (事前の申込みは不要です)

 その他、会の活動に対するお問い合せは、下記のメール先までお願いします。

  小網代の森を守る会スタッフ 浪本晴美 BYT00657@nifty.ne.jp

 また、小網代の森を守る会にご入会いただきますと、観察会のお知らせをはじめ情報を満載した「小網代つうしん」を年に数回お届けします。上記までご連絡いただくか、郵便振替で会費を納入して下さい。

   郵便振替 00260−4−21569
   年会費(7月〜6月)一般会員1,000円(入会金不要)
             賛助会員5,000円(入会金不要)

6.最後に

 昔はどこにでもあったような、ありふれた森なのですが、今ではここ以外に、このような森はあまり見当たりません。

 小さな子どもたちにとって、木に登ったり、泥んこになったり、カニを捕まえる工夫をしたり、といった自然とふれあうことができる遊び場があるということは、大変大きな意味があります。

いつまでのこの場所に、子どもたちが遊ぶことのできる森を残していくことが、私たち小網代の森を守る会の、最大にして唯一の願いです。

文:1996年1月 小網代の森を守る会  簗瀬 公成
   230クラブ新聞社発行
   「ハマ線物語Vol.9 多摩・三浦丘陵〜川と市民のネットワーク〜」
    (1996年3月発行)に掲載のものを一部変更


*:
2009年1月5日から、金融機関から郵貯銀行に振込みをすることができるようになりました。
会の財政が学校案内の増加などにより少々苦しくなって参りました。皆様の温かいお志をお待ちしております。
 銀行名 ゆうちょ銀行
 金融機関コード 9900
 店番 029
 店名 0二九(ゼロニキュウ店)
 預金種目 当座
 口座番号 0021569
 カナ氏名(受取人名) コアジロノモリヲマモルカイ


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三浦市花とみどりのつどいシンポジウム(99.10)
小網代の森を守る会総会‘99
朗報!2歩3歩4歩5歩の前進(99.4)
かながわナショナル・トラストシンポジウム(99.1)
映像とトークで振りかえる小網代保全への15年(98.9)
小網代の森を守る会総会‘98
小網代の森を守る会総会‘97
97年度の活動について
「イルカ丘陵絵はがきセット」のご紹介
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