若手の台頭

by  KAZUHIRO SHIMOURA

May. 1, 2000

 

先月は若手の台頭を身近に感じる機会がいくつかあった。

 

一つは、4月5日に加藤哲子(Kato Satoko)さんが、けいはんなプラザのロビーでおこなったピアノ演奏である。毎週水曜日の昼休み、けいはんなプラザのコンクリートで囲まれた吹き抜けのロビーで若手のコンサートがひらかれる。観客はパイプいすに座って30名ばかりの小さなコンサートである。ピアノもそれ程良いものではない。

 

私は横のレストランで食事をしていたが、聴いたことのあるメロディーが流れてきたので早々に食事を終わらせてロビーに向かった。それはベートーヴェンのソナタ第30番であった。私は有名なピアニストのレコードをいくつか持っているが、この時の演奏ほど感激したことはない。涙を抑えるのに苦労した程である。

 

彼女のプロフィールには、師事した先生の名前など長ったらしく書かれておらず、その時の演奏が全てという一期一会の潔さがあった。第2回日本クラシック音楽コンクール全国大会特別賞受賞ということで、相当な実力者なのだと思う。ベートーヴェンの後期ソナタをあれだけ見事にひきこなす日本人は他にはいないのではないか?

 

遡って4月4日には大阪厚生年金会館ホールで、大阪市創業支援センターによる「あきない・えーど2000」という催しがあった。ここで20歳代のネットベンチャーの経営者が壇上にずらりと並んだのであるが、驚いたのは京都大学の学生が2名いたことである。京大の学生がベンチャーを志向するようになり始めたのは明らかに時代の変化である。しかも彼らは常識があり優秀であった。

 

さらに日曜日にテレビをつけると、将棋の時間がすっかり変わっていた。棋士が若手ばかりになっているのである。白髪や頭の薄くなった人は一人もいない。しかも解説者が外国人である。将棋もコンピュータ時代なのかも知れないが、実力主義、ワールドワイドな新しい世界の到来を象徴しているように思った。

 

企業経営者や政治家、大学教授などにも、もっと若手が台頭することを期待する。

 

http://www.keihanna-plaza.co.jp/

 

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