電話がタダになる話

by KAZUHIRO SHIMOURA

Mar. 20, 2000

 

少し前であるが、シスコのチェンバース会長が5年以内に電話代がタダになるという予言をし、NTTの宮津社長があわてて否定した事があった。インターネットは技術的に見てまだまだ発展の余地があり、やがて電話やテレビを飲み込んでいくものと予想される。我々は電話代としてではなく、ネットワーク接続料やコンテンツ料として代金を支払うようになるのである。

 

ケーブルモデムやADSLなど、メガビットクラスの常時接続回線が普及すると、どの様な世界が広がるだろうか? まず長電話を気にする必要はない。全世界につながっているから長距離電話も気にする必要がない。さらに音声だけでなく映像通信も可能になる。時差は残るから時間帯は考えないといけないが、英語さえ話せれば世界中の人々との日常的な交流も可能となるのである。

 

世界の状況が筒抜けとなり、独裁者の出現や異文化への不安に基づく戦争の火種も減少するに違いない。残業中のお父さんも、パソコンから家にテレビ電話すれば、子供に顔を忘れられる心配はない。なにより遠距離恋愛中のカップルや、海外離散家族などには革命的な恩恵をもたらすだろう。やがて湯川秀樹、アインシュタインやジョン・レノンが想像した国境のない世界、世界連邦が現実のものとなるかも知れないのである。

 

地域社会においても多大な影響が考えられる。主婦やお年寄りは、パソコンで井戸端会議をするようになるだろう。助け合いの輪も広がり地域社会が復活する可能性もある。グループウエアが発展すれば、地域の政治、経済、教育、医療などあらゆる面に変化が見られるだろう。産業革命以降、巨大都市の出現とともに地域社会が崩壊したが、ネット上に地域情報空間が復活すれば、より民主主義的な社会が実現されるだろう。

 

これらが実現された暁には、技術開発に生涯を捧げた技術者達の努力が記憶される事を願っている。


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