社会のオペレーティングシステムを設計しよう

by  KAZUHIRO SHIMOURA

Mar. 20, 2000

 

最近、Windows2000をいくつかのパソコンに入れてみたが、なかなか調子が良い。Windows2000のソースコードは数千万行におよび、64,000個のバグが残っているにもかかわらず、である。もともと欠陥の無いソフトウエアなど存在しない。取りあえず動いていることをもってヨシとするのだ。2000年問題で騒いだ人達はその点がわかっていない。

 

パソコンのような文房具に数千万行のコードが必要、というのは驚きである。「計算機は思い通りには動かない、プログラム通りに動く」という格言があるが、機械というのはそれほどに融通がきかず、細かい事まで一々指示しなければならないのである。それが人間との違いだ。夫婦の会話など3語で事足りるという説もある。

 

オペレーティングシステムの目的は、パソコンを構成する要素、CPUやメモリ、ディスク装置、キーボード、ディスプレー、各種周辺機器等のパフォーマンスを最大限引き出す事にある。各要素の性能を最大限引き出せる程、優れたOSという事になる。社会システムでも企業組織でも研究機関でも、その構成員のやる気と能力を最大限に引き出すもの程、優れたシステムと言うことが出来る。

 

ソビエト連邦の崩壊により、社会主義よりも資本主義の方が優れたシステム、という事になっている。同じ資本主義でも、情報ネットワークを最大限活用した流動性の高い、直接金融、民間経済主導のネットワーク型社会の方が、間接金融で規制の多い社会よりもパフォーマンスが高い事が実証されつつある。人や金などのビジネス要素が成長点に効率的に集まるからである。現在の日本社会システムや大企業システムは必ずしも構成員、特に若手の未来企画能力を十分に引き出しているとは言えない。

 

OSを書くプログラマは、パソコン世界の法律家である。彼らが書き下ろした規則、プログラムに従ってパソコンが機能するのである。そのボスがビル・ゲイツだった訳だ。彼らはインターネットの出現や各パーツの発展にしたがって、OSをバージョンアップしてきた。日々進歩する社会においても、変化を考慮して定期的に法律をバージョンアップすることが必要となる。

 

限られた専門家だけで議論するのではなく、オープンソース形式で広く公開の場で議論し、ルールを定めるべきである。自らを縛るルールを自分で考え決定するのが民主主義の根本思想であるからだ。子供の教育に関わる教科書や指導要領なども親がきちんとチェックすべきである。要は公開の場(例えばネット上)でいろいろと議論し、結果についてはみんなで責任を持つべきなのである。そのためのインフラを構築すること、すなわち社会の情報交流を活性化し、より豊かなものにしていくことが、ネットビジネスのシステム設計者に求められているのである。彼らは新しい社会のオペレーティングシステムのプロトタイプを創り始めているのだから。


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