ネットビジネスの本質

By KAZUHIRO SHIMOURA

Feb. 21, 2000

 

最近、ネットビジネスという言葉が流行している。従来の情報ビジネスが企業内の情報システムの設計構築を請け負うものであったのに対して、インターネットを介して一般消費者に直接サービスを提供するビジネスである。このような形態はパソコン通信という形で従来から存在したが、近年インターネットにより大幅な進展を見せている。

 

システムの構築は従来、企業の下請け的存在であった。金融機関などからシステム構築を受託し、苦労して完成させてもその手柄は発注元にある。システム屋が社会の前面に出る事は無かったのである。インターネットがこの状況を変えつつある。ネットビジネスではシステムの改良がダイレクトに利用者に伝わる。

 

ネットビジネスで重要なのは、いかに役割を分担し、多くの力を結集するか、という点である。例えば電力システムでは一般消費者に電気を供給するのは電力会社であるが、建物内の配線の設計、構築を担当するのは電気工事会社であり、利用技術を開発、普及するのは電機メーカー、販売店である。その他、保安協会とか主任技術者とかシステムの維持運用に携わる多くの人々が存在する。

 

ネットビジネスの市場は今後どのように成長するのだろうか? もちろん現在流行の電子商取引(EC)は重要であるが最終形態ではない。衣食住が満たされれば永遠に物を買い続けるわけにはいかない。次の展開は、放送、教育、娯楽、そしてコミュニティーサポートなどであろうと思われる。

 

メガビットクラスの常時接続サービスが実現されれば、放送をネットに取り込む事は難しくはない。これで従来の放送に、オンデマンド化、双方向化、国際化、といった機能を付加することができる。従来の視聴率重視の大衆向け番組から、より専門性の高い多様化した番組提供が可能となるだろう。

 

これが進むと、放送と教育の境界は曖昧になってくる。現在でも放送から学ぶ事は多いし、NHK教育番組では放送大学講座など、日本を代表する講師陣による優れたソフトが制作されている。もちろん、オンデマンド、双方向、国際、といったネットの特徴は教育においても非常に重要である。

 

双方向化が進むとコミュニティーの形成が可能となる。現在は電子メールをベースとするメーリングリストにより、数百人単位のコミュニティーが形成されているが近い将来、伝送帯域幅の拡大やソフトウエアの改良により、もっと大規模で多様なネットコミュニティーが形成されたり、既存組織にも新たな生命力が吹き込まれたりするだろう。

 

私はネットワークを介して、日本全体が一つの有機体として調和を保ちながら機能するような社会を創ってみたいと考えている。人々の心の中に会社を創りあげることこそが真の公益事業の役割である。ネットビジネスの本質は公益事業に他ならない。

http://www.fujitsu.co.jp/hypertext/fri/ec/index.html


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