企業の株式時価総額(新しい企業組織モデル)

by  KAZUHIRO SHIMOURA

Apr. 9, 2000

 

ソフトバンクなどグループ企業の株式時価総額を最大化する経営モデルが主流となりつつある。 株式交換による企業買収やストックオプションなども可能となり、株価の重要性が高まっている。株価は将来の可能性を反映するから、赤字のベンチャー企業が既存の大企業の時価総額を越えることもある。時価総額が何で決まるのか分析してみよう。

 

まず、社員の時価総額の合計値が企業の時価総額となり、企業の時価総額の合計値が国家の時価総額になる、というモデルを考える。人材が各企業にどのように配分されようとも国家のなかで閉じているとすれば、国家の時価総額は一定である。教育とは国家の時価総額を高める活動に他ならない。

 

日本では、大企業の方がベンチャー企業よりも優秀な人材が集まるから、社員の時価総額が高くなるはずであるのに、そうなっていない。すなわち大企業とは「優秀な人材をスポイルしてその成長を阻害するシステム」と言うことができる。彼らの労力、精神力の多くは社内向け資料や派閥力学に費やされ、人事は出身校や年次で機械的に処理される。大企業の人材の将来的可能性を100%引き出す経営、人事システム構築にはまだ誰も成功していない。

 

大企業はいかにして人を生かし、時価総額を高めることができるか? 情報技術を上手く使えばこれが実現できるかも知れない。松下幸之助はバス1台という表現をしているが、一つの目的集団の適正規模は50人程度である。学校のクラスの規模に相当する。これくらいだと互いの人格が見え、ダイナミックな人間関係の展開が期待できる。

 

ちなみに都市の大きさにも適正規模があり、文化を育むには50万人くらいが適当ではないかと思う。金沢とか松山とか松江とかがこの規模である。これより大きいと無機的な大都会になってしまう。研究チームにも適正規模があり、6、7人程度が最も生産性が高いという話がある。

 

10000人の大企業があるとして、50人づつ分けると200グループになる。各グループは7人ずつ7チームで構成されている。グループとチームの責任者が事業運営の中核となり自立的に行動できるようにする。各グループは全体としての信用力、ブランド力を生かして、人材採用、資金調達、販売活動などを展開する。仮に事業領域が20分野あるとすれば、各クラスター平均10グループが協力することになる。この10名で取締役会を構成し、各分野の方針決定を行う。

 

報酬は、個人とチーム、グループ、クラスター、全社の実績に(3:3:1:1:2)程度、すなわち責任の大きさに比例して連動させる。各個人は自らの報酬が極大化するように行動する。リーダーはチーム構成員の総意により任命され、気に入らなければチーム間の移籍も可能である。これらの活動内容は全て統一的なグループウエア上で把握され、各自の満足度が最大化するように処理される。あとは優秀な人材を集める事、成長分野を押さえる事、で社会の近代化を加速すると同時に企業全体の時価総額が最大化されることになる。


RETURN