「美浜の会ニュース」No.43 (1998.3.7)


 福井県知事は
 プルサーマルの事前了解願いを認めるな

フランスの資料を公開させ議論を一からやり直させよう!

『フランスの資料は出せませんが安全だと信じて下さい』 (関電交渉で)


 関電は、2月23日、福井県と高浜町に対しプルサーマル事前了解願いを提出した。関電秋山社長は、「国の安全審査に約1年かかるため、3月中に認めてくれるよう」申し入れた。福井県知事は26日から始まった県議会の中で、「余剰プルトニウムを持たないという国の政策を考えると、中期的な課題としてプルサーマルには現実的に対処しなければならない」「安全性などさまざまな情報が提供された」「県民理解は深まりつつある」と述べ、関電の事前了解願いを認める意向を表明している。知事は、3月20日までの県議会の議論をふまえて、その後判断を下そうとしている。 差し迫った課題は、福井県に事前了解願いを受け入れさせないことにある。そのために、関電が安全性の根拠にしている「フランスの実績」に関する具体的資料を公開させ、それを踏まえて、再度一から議論をやり直させることにある。福井と関西の運動の力をここに集中しよう。

 安全性を示す情報は「提供」されていない

 いったいどこで、高浜4号炉でのプルサーマルの安全性を示す情報が提供されたというのであろうか。高浜4号だけで1.2トンものプルトニウムが使われること、これまで経験したことのない世界最大規模のプルサーマル計画であること等々は、全く県民には知らされていない。関電・国は、「説明会」でも、新聞折り込みでも、テレビのCMでも、これらのことには一切口を閉ざしている。関電は、安全性の根拠として「フランスの実績」をあげている。しかし、その具体的資料は一切公表していない。私達が行った交渉でも、フランスの資料は公表できない、今後福井で説明会は行わないと断言した。どうしてこれで、情報が提供されたと言えるのだろうか。さらに、資料を出さないのは、敦賀・高浜で説明を行ったあの関電桑原原子燃料部長の指示によることを、知事はどう受け止めるのであろうか。関電は、六ヶ所再処理工場が動けばまたプルトニウムが増えるため、プルトニウムがあるかぎり永久にプルサーマルを続けると言っている。知事の言うような「中期的」課題ではない。余剰プルトニウムを持たないと言いながら、その実態は、海外への再処理委託・六ヶ所再処理工場の推進に現れてい るように、余剰プルトニウムを産み出す政策でしかない。プルトニウムを産み出す再処理を続けながら、余剰をもたないために危険なプルサーマルを行うとは、本末転倒である。この間立て続けに行われた「説明会」で、県民から、「なぜそんなに急ぐのか」「なぜ高浜なのか」「国民的合意はあるのか」「大阪など大電力消費地で説明しているのか」等々、批判・不満・不安の声が多く出されている。どうして県民の理解が深まっているといえるのであろうか。
  

関電−「フランスの資料は出せませんが、実績があるので安全だと信じてください」

 私達は、2月20日、事前了解願いを提出しないよう求めて関電交渉を行った。その中で関電は、美浜1号での少数体試験だけでは高浜4号のプルサーマル計画の安全性を実証したことにならないとまず認めた。それに続けて、「しかしフランスの実績がありますから」と「フランスの実績」が安全性の根拠であることを表明した。ところが、私達が事前に質問書を出していたにもかかわらず、「フランスの実績」に関する具体的資料は一切出さず、「契約上の信義」等々述べて、とにかく関電を信じてくれと言うだけ。さらに、広報部の安部課長は、「原子燃料部の桑原部長の指示」で出せないことを明らかにした。敦賀の「関電説明会」で陣頭指揮をとったあの桑原部長が判断したというのである。これ一つとってみても、関電が福井で行った「説明会」がいかにデタラメで、県民をないがしろにしているかがわかる(詳細はP.4〜を参照)。

「プルトニウム使用量では、高浜の方がフランスより大きい」(大津での関電説明会で)

 関電はいたるところで、「高浜は1/4炉心」、「フランスは1/3炉心」と宣伝し、あたかも高浜の方がフランスより小規模であるかのようにみせかけようとしている。高浜の1/4炉心はプルトニウム量にして1.2。フランスの1/3炉心はプルトニウム量にしていくらになるのかという私達の追及に対して、「たしかに、高浜の方が規模が小さいというイメージを与える」ことまでは認めながらも、「具体的数値は契約上言えない」をくりかえすばかりであった。その後大津で開いた関電説明会では、会場からの質問に対して「プルトニウム使用量では、高浜の方がフランスより大きい」ことまでは認めている。MOX炉の最大の特徴は、燃料の中のウラン235をどれだけ核分裂性のプルトニウムに置き換えるかによって決まる。MOX集合体の数と使用されるプルトニウムの量は別である。 福井県議会議員の「欧州視察報告書」(97年11月)の中でも、「ちなみに、日本の高浜3、4号機では、MOX燃料の装荷割合が炉心の1/4で、フランスの30%より低くMOX燃料導入時は、タンク等のボロン濃度を高める程度ですむようである」と記載されている。ここでも、集合体数の割合だけで、あたかもフランスより規 模が小さく、危険性が少ないかのように述べられている。福井の県議会は、フランスの原発で装荷されているプルトニウムの量がいくらなのかを関電に問いたださなければならない。同報告書の中では、海外と比べて情報公開の点で大きなひらきがあることを強調している。そうであるならばなおさら、関電に情報を公開させる必要がある。

関電は「フランスの実績」の具体的資料を公開せよ

 フランスでは、プルサーマル計画が縮小されることになった。フランス電力公社EDFはMOX使用の許可を当初の20基予定から28基に拡大することを狙っていた。しかし、昨年末、フランスの環境相と産業長官は、現在の16基に4基を加えるだけに制限することで合意し、拡大計画にストップをかけた。 現在わかっているだけでも、フランスのMOX燃料燃焼度は集合体平均で最高40000、プルトニウムの富化度約5%。これと比べると高浜の計画は、規模においても危険性においても大きくなる。さらにMOX燃料の場合、燃焼度が40000を越えるとガスの発生が急増し、このためにフランスでは、燃焼度をこれ以上引き上げることにストップがかけられている。実際、カブリ炉の実験では、燃料棒の激しい破裂が起こっている。(詳細はp8〜参照)。 関電は「フランスの実績」のリアルな姿が明らかになることを恐れている。関電がフランスの資料を出さないのは、そこに関電の弱点があるからである。それが明らかになると高浜4号炉のプルサーマル計画の安全性を実証するものがなくなるからである。大規模で危険な高浜4号のプルサーマル計画の真の姿が明らかになるからである。 関電は、こ れら「フランスの実績」をなんとかひた隠しにして、高浜4号で大規模で危険なプルサーマルを強行しようとしている。なんという卑劣で傲慢な態度であろうか。関電にフランスの資料を公開させよう。

 福井県知事は、事前了解願いを認めるな

 福井県が関電の事前了解願いを受け入れるかどうかは、福井・関西だけの問題ではない。福井の動きをにらんで、次は東電が、福島・新潟へ事前了解願いを出そうと手ぐすねを引いてまっている。六ヶ所への使用済み燃料搬入の安全協定の行方にも大きく影響する。 プルサーマル反対闘争は初戦の山場を迎えている。この3月期、短期集中して、まずは、フランスの具体的資料も隠したまま、プルサーマルを強行しようとする関電の姿勢を暴露しよう。私達は、福井県知事に要望書を送付した。”関電はフランスの資料を公開せよ”の声を福井・関西からあげていこう。フランスの資料をもとに、一から議論をやり直させよう。事前了解願いを受け入れようとする県知事・県議会にけん制をかけよう。