西から伸びる砂州の中ほどの駐車場からサロマ湖を見る。
右手の水面が湖、左手の反対側が海。手前の緑は湿地の草原でポツポツと花が咲いている。鳥が鳴くのどかな風景だ。
道をさらに進み港の集落を過ぎると、竜宮台というちょっとした展望台と有料キャンプ場がある。
しかし、竜宮台に行ってはいけない。(笑)
特に眺めがいいわけでもない、というか少々寒々しい景色なのだ。具体的には自分の目で確かめてもらうしかないが、まさか北海道でこのような力の抜ける風景に出会えるとは思わなかった。そういう意味では実に貴重な景観である。ある意味お薦めポイントなのかもしれない。冗談抜きで私には色々と面白かった。
一人旅の者がポツポツと訪れるが皆、少しまわりを見回し淡々と帰っていく。まあこういうこともあるさ、といった様子だ。
しかし、私と同時に到着したカップルは違った。女の子は竜宮台に上がるなり、なんの価値もない眺めに「あんたが連れてくるところ、いっつも変なとこじゃない!」と男に食ってかかった。もっともだ。しかし私は男に同情した。地図を見ていれば、どうしてもここがサロマ湖の特等席だと思ってしまう。気弱そうな男の反論が良かった。「お前が感動しようとしないから感動できないんだ」。鋭い洞察だが女の機嫌が戻るはずもない。
このあと私は幌岩山からの展望によりサロマ湖が大変気に入ったのであるが、あのカップルはどうしたろうか? 恐らくは展望台の存在も知らず、気まずい雰囲気のまま帰途についたのではないだろうか。
最後にフォローを。現在、竜宮台付近は工事中であり、それが景観を損なっているのかもしれない。工事が終われば、あるいは結構な眺めなのかもしれない。それを確かめるためもう一度訪れてみたい。
(補足:これは夏の話であり流氷が流れ着く冬の眺めはまた全然別なのでしょう。徒歩でいくしかありませんが砂州の先端には灯台があるということで、その眺めもちょっと興味をそそられます)
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中湧別(なかゆうべつ)と網走を結んでいた国鉄湧網(ゆうもう)線の、芭露(ばろう)駅跡。
赤い屋根のかわいい駅舎は今も地元の旧駅保存会の手で保存され、無料宿泊所として開放されている。駅舎脇に設置された「芭露駅の跡」の石碑には、開設昭和10年、廃止昭和62年とある。
この時にはオジさんが線路の草を刈り、オバさんが駅舎の掃除をしていた。駅舎内にはカーペットが敷かれ、水道にテレビもある。
この後見た釧路本線の板張りの駅は現役のものでも忘れられたような雰囲気。駅名よりも、入っている食堂の看板が目立ち廃線の駅かと思ってしまった。
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サロマ湖の中ほどに位置する幌岩山山頂(376m)のサロマ湖展望台。
ここがサロマ湖のアリーナ。大きすぎるサロマ湖は湖岸からは海にしか見えないが、ここからなら一望のもとに収めることができる。
ここまでは行き帰りで合計10kmのダートを走ってくる。1-1.5車線の砂利ダート。
展望台への地図が立つ道脇に車を止めて遊歩道を入ると「熊出没中のため入林を禁止します」の看板が。だが、わざわざダートを走ってきたのに引き返すのもしゃくだ。非常に恐い思いをしながら結構な距離の遊歩道を進んでここまで来た。ところが道はこのすぐ近くまで通じ、少し歩くだけでよかったのであった。今回はこういうことが多い。
展望台には無料の双眼鏡が設置され、湖岸の景色が手に取るように眺められる。
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展望台から東を望む。
これがサロマ湖かと、ここに登って初めて全貌がわかる。
水平線の下に見える細い筋が湖と海を隔てる砂州。右手に突き出しているのが、無料キャンプ場のあるキムアネップ岬。◎
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展望台から西を望む。
湖のなかに港がある。港を出た船が一直線に砂州中央の開口部を抜け、外海に出ていった。
湖面に西日が反射して眩しい。この日、キムアネップキャンプ場で見た夕陽は格別であった。◎
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上の写真と同じく、幌岩山のサロマ湖展望台からの180度パノラマ。
写真が悪くて申しわけないが、この眺めの雰囲気の幾ばくかは伝わるだろうか。写真は平面だが、これが自分の周囲180度をぐるりと囲んでいるのである。
残念だが、この広さは写真にならない。
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サロマ湖東部に突き出したキムアネップ岬。その先端を占めるキムアネップキャンプ場。無料。
広々としたキャンプ場。シーズン前であり、この日テントを張ったのは2人だけであった。手前の黒い影は新しいキムアネップ休憩所の建物。水洗トイレがあり、7,8月はシャワーが使えるそうである。
左手の浅瀬はサンゴ草群生地になっており、9-10月には天然記念物のサンゴ草が紅い絨毯のごとく咲きそろう。このあたりでは国道を外れるとダートも残り、畑になったなだらかな丘が続く。
この夜はここで車中泊することにした。素晴らしい夕焼けを1時間以上も楽しむことができた。
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ワッカ原生花園への入り口。
この先は一般車両進入禁止。無料のシャトルバスかレンタサイクルで向かう。
この時は朝早すぎてここで引き返したのだが、このシャトルバスの運転士のオジさんの話が楽しいのだと、この後カムイワッカ湯の滝で一緒になったオジさんから聞いた。そして北海道から本州に帰ってきたその朝ラジオを聞いていたら、シャトルバスの運転士さんの話が評判だと番組で紹介されたのだった。「くー、北海道に帰りたい」と嘆じたのは言うまでもない。この次にはぜひ。
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