(1999/07/21更新)

初めての北海道 08
オンネトー



 神秘の湖オンネトー。この文言はオンネトー湖畔の立て札にしっかりと記されている。
 オンネトーの名を知ったのは、自転車で初めて北海道を走った高校生の手記をもとに彼の叔母さんが小説化した本においてである。(タイトルは失念) なかなかいい本で、そこでのオンネトーの描写は印象的であった。彼は旅の途中出会ったライダーに「摩周湖よりもいい」と強く勧められオンネトーを訪れたのである。
 そんなわけでかなり期待して訪れたのだが、結論から言えば以下に書いたように少々ガッカリしたものであった。
 ただし、Webでオンネトーを検索してみた限りでは概ね賞賛されているので、よほど私の運が悪く、印象の悪い部分を見ただけかもしれない。なにより肝心のオンネトー湯の滝と展望台を見ていないので今度ぜひ行ってみようと思う。
 ちなみにオンネトーは北海道三大秘湖のひとつに数えられる。残るふたつは、支笏湖(しこつこ)そばのオコタンペ湖、そして然別湖(しかりべつこ)そばの東雲湖(しののめこ)。ただし、ツーリングマップルではオンネトーの代わりに、北見市街南のチミケップ湖が上げられている。



所在地:北海道足寄町
撮影日:1999/06/26(土)
Digital Camera:FUJIFILM DS-8
Camera:Canon EOS100QD + EF28-80mm, EF80-200mm, Tokina AF 235II
Scanner:HEWLETT PACKARD PhotoSmart
Re-Touch: Adobe Photoshop 5.0, Jasc Software Paint Shop Pro 5
◎の画像をクリックすると800x600の大きな画像が表示されます。



 かすかにコバルトがかったオンネトーの湖水。湖畔を走る道道664の反対側の東岸。
 かなり朝早かったので、陽がもっと高くなれば鮮やかなコバルトブルーなり、エメラルドグリーンに見えたかもしれない。
 ここまで来るのに、樹齢100-200年のアカエゾマツの生える原生林を2km以上歩いてきた。先にいけば道が湖畔に出ることも知らずに、だいぶ手前の野中温泉の駐車場に車を止めてしまったのだ。ここから原生林の道を抜けオンネトーに向かった。
 朝方まで雨が降っていたので、雨粒をたっぷり含んだ松の若木を分け入っていくと、すぐに全身びしょ濡れになった。オンネトーまで1.93kmの立て札。げんなりするがしかたない先に進む。
 夜明け直後で森のなかは薄暗い。どんどん森の奥深く入っていくので熊が恐い。遠くの茂みが熊に見えたり、うろになった暗がりが熊の巣ではないかと怯えてしまう。できるだけ太い枯れ枝を拾って肩に担ぎ、口笛を吹いて、背後を振り返りつつ歩いた。さすがに2kmは遠い。
 ようやくオンネトー湖畔にたどり着く。しかし眺めが広がらないので左手に移動する。遊歩道の板を渡すために太い木が根こそぎ引き抜かれ、2m近くある根っこの円盤がオブジェのように立っている。写真の湖底に沈む木は、自然に倒れたというよりも遊歩道を作ったために倒れたように見える。森の中の遊歩道の両脇にも、倒木を輪切りにしたものが多数、無造作に転がっていた。
 なおも眺めの広がる場所を探して移動すると国設野営場にたどり着いた。地図で見知っていたが、まさか湖畔を切り開いているとは思わなかった。コンクリートの水路、マンホール、湖畔のベンチ――近所の公園のようだ。およそ神秘性は感じられない。
 呆気にとられ、野営場から再び2.5kmの道を駐車場に戻った。野営場があるくらいならと、帰りは熊もそれほど恐くなかった。
 車で道道664を足寄方面に向かう。往復5kmも歩き、ヘトヘトだ。と、すぐに左手に湖面が見えた。もちろんオンネトーの湖面だ。
 なんだって!? 神秘の湖の湖畔を舗装路が走っている!?
 道は湖畔から離れて走っているものと思っていたので心底驚いた。
 湖畔では学生風の男女のグループがキャーキャー笑いながら記念写真を撮っている。さっきまで私はあの反対側の森で、びしょ濡れになりながら死ぬほど熊に怯えていたのだ。完全に力が抜けてしまった。
 展望台へ50mの表示が見えたが、もはや車を下りて歩く気力もない。オンネトー湯の滝は言わずもがなだ。湯の滝ならカムイワッカで充分楽しんだ。私はすっかりひねくれていた。
 上記のようにWebで検索した限りオンネトーはなかなか評判がいいです。うーむ、やはりオンネトーは今でも神秘の湖なのでしょうか?





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