▲侘 寂 萌 インデックス



インディアン・サマー

 揚げたてのカキフライで夕飯食いながら「そういや、シゲチャンち、コンクリの新しい建物にかわってるけど材木屋やめたの?」となんの気なしに母ちゃんに聞いたところが、去年の秋、シゲチャンはインドで自殺したんだよとの返事で驚いた。
 慌ててバカ間君に確認してみたが、インドで自殺という以外にはよく知らなかった。葬式などは身内だけで済ませたようで、それ以上の話はほとんど伝わっていないらしい。

 シゲチャンは小学校の同級生で、面白くてケンカが強くてカッコよくて、女にモテた。外見雰囲気はショーケン、萩原健一にちょっと似てる。傷だらけの天使の。
 シゲチャンは小学生の頃から大人びていて、シゲチャンちにたくさんあった平凡パンチやなんかのヌード写真をガキどもみんなですげーとか言いながら見たもんだった。
 自殺とは意外な気もするし、インドでってところがシゲチャンらしい気もするが、よくわからねえ。

 折しも俺は、今まで縁のなかった世界――真っ当な実社会(ワラに出て働いてみて、どいつもこいつも、1千万プレイヤーのくせして貧相な冴えねえツラしてるのを見るにつけ、この日本に幸せな奴はどこにいる? と考え始めたところであった。

 イラクで戦争が始まって1週間。双方の死者は、米英側が50人弱、イラク側が100人くらいのものらしいが、こんなチンケなもめ事で喜んでる場合じゃねえぞ、マジで。
 日本じゃ毎日80人以上も自殺――「見えざる戦争」の犠牲が出てるんだからな。罪もない子供たちがイラクで何人死のうが関係ねえって。
 この国じゃ、シゲチャンみたいに面白くてケンカが強くてカッコいい奴まで死んでんだ。まさに無差別殺戮。

 とにかくなんだ、人間の盾だっけ。ハナから体投げ出す気もねぇくせに、連中は自分たちこそが見えざる戦争の侵略者側だってことにどうすりゃ気づく?



戦争賛成

 戦争賛成。
 正確に言うと「戦争反対」に反対なのだが、反対反対ウザイんで、もう断固賛成。
 しかしこれは単なるアンチでなく、科学的、倫理的、道義的に真摯に考えての戦争賛成(反対に反対)なのである。
 小泉さんが国会で皮肉たっぷり揶揄したように、戦争反対をアイデンティティにしてる人間は放っておくがよろしいのだろうが。

 確かに戦争反対はセレブでオサレでリベラルだが、そんなに人命尊重したければ、年間3万人にも登る、この国の自殺者のことも気にかけてやってはどうか。一生会うこともないイラクの子供たちやニシタマオことタマちゃんばかりでなしに。
 タマちゃんが拉致されて北海道でカレーの缶詰にでもされたら大いに嘆き悲しむだろうに、3万人のうちの4割を占める中高年のオジさんたちはアイフルのチワワ以下か。

 もっとも、海の向こうの戦争に反対するなら、単にテレビカメラの前でパタゴニアのジャケット着て叫ぶだけで済むが、中高年の自殺なんかに関わっちゃ面倒だわな。ひとつもオサレじゃねーし。宇宙船地球号の一等船室の乗客(©小田島隆「我が心はICにあらず」)の自分探しの要件はまずオサレ。あと悲惨の度を極めるほど萌える。たくさん人が死ねば死ぬほど。でも日本人のオジさんじゃダメらしい。なにしろ毎年1万2千人も死んでんのに知らんぷりだからな。どうもその萌えどころが俺には分からぬ。ヲタの萌えどころはマジ分かんねー。ジェネレーション・ギャップやカルチャー・ギャップどころか、DNAギャップなのか。

 果たしてイラクの黄色い大地に住む澄んだ瞳の少年は、極東の島国の黄色人種の「ノー・ウォー!」とかいうシュプレヒコールをどう聞くのだろう?
 俺がその紅顔の美少年であったならば、アメリカ兵よりもムカツクやも。ていうか、そのうまそうな500mlのペットボトルのジュース寄こせよ、とか。お前らがエコとか言ってんなよ、とか。たしかに、エコエコ言う奴ほど無駄づかいが多いという、この分かりやすい不条理。反対反対言う奴ほど――。

 まあ戦争という究極のシリアスな事件も、明日未明に上陸する予定の超大型台風みたいなものか。
 台風の場合はたいていが熱帯低気圧になりやがって、犬吠埼沖をチンタラ通過して、学校の校舎も崩壊したりしないんだが、今回はブッシュ(米国人)がマトモじゃなくて多少なりとも面白くなって、反対派賛成派共々やけにみんな楽しそうでご同慶の至りと言うべきか――。世界人類が平和でありますように。



ポール・グリモオの城

 サラリマンの皮をかぶったエロゲ屋として(いや、エロゲ屋の皮を脱いだサラリマンか)会社から帰宅してテレビつけたら「天空の城ラピュタ」をやってたんだけどとても画面を正視できずに5分で消した。

 もうダメ、エチー過ぎ!
 エロゲ屋のヲレが見てもヤヴァイくらいセクシャル。プライムタイムの地上波に堂々とのせていいようなモンじゃねーっす、あれぁ。もう立派なソフトポルノ。

 ナウシカ以後に限定すれば、ラピュタがもっとも宮崎駿の危険な二大特徴が鮮明に現れた作品であろう。
 危険とは、ひとつはもちろん炉利属性であり(千と千尋も要するにソープランドってわけで、その割に主人公をわざと可愛くしていなくて往生際が悪いが。これは高畑勲の影響)、もうひとつは無意識の引用癖。端的に言うとパクリ。

 ほとんどと言っていいほど多くのカット、シーケンス、シチュエーションで引用元たる作品がふっと思い浮かぶ。
 引用元と書いたように私は、宮崎作品に散りばめられた、というよりも詰め込まれたそれらをパクリだとは思わない。ちょいと冷や汗が出るくらいにストレートな引用ぶりだが、作為がなくいっそ清々しい。
 だって、宮崎アニメ、面白れーもん。歌の世界にも本歌取、面白ければいいのだ。

 しかし、そんな私でもカリオストロの城を弁護するのは正直苦しい。
 カリ城はもう、まんまポール・グリモオの「やぶにらみの暴君」(リメイク版「王と鳥」)である。
 もうディズニー・レベルwの引用。かなりヤヴァイ。宮崎駿、豪傑だよ。原案として「やぶにらみの暴君byポール・グリモオ」とクレジットしなくても許されたのは、単に当時はアニメも宮崎駿もマイナーだったから。もう二度とできない、早い者勝ちだ。

 宮崎アニメってのはヤヴァさが身上だ。危険な面白さ。エコだの独自の日本的世界観だの、そんなの関係ねえ。パンチラのない魔女宅に価値はない。

 であるから、マンガ・アニメ・ゲームは日本が誇る文化とか言って持ち上げてる似非文化人だのサブカル学者だのは、せめてポール・グリモオくらい見てからマンセーしてろつーの。(第一回の広島国際アニメーションフェスティバルに特別ゲストとして招かれたグリモオ氏は、真っ白なシルクのスーツがよく似合う銀髪のハンサムなお爺さんであった)

 10年後か20年後になるか、いつかはエロゲも浮世絵のごとくに独自の日本美術だとかなんとか評価される時代がくるのだろうが(こないって)、アニメや漫画やゲームの現場で喘いでいるヲタたちより、そういう「文化」に後からすり寄ってきた門外漢の連中ほど高級な生活をしている現実はどうにも不条理ではないか。

 エロゲ屋なんてのは、みんなヤクザ上がり(つかヤクザ崩れ?w)のピーコ野郎ですぜ。
 そーゆうジャンキーなカルチャーを連中がどんなふうに持ち上げるかいまからとてもたのしみです。なぜかとつぜんいかりゲージがあがってしまいました、あるじゃーのんのぱくり。だにえるかーる、ぢゃなくてきいすさんごめんなさい。



大企業

 えー、先月に引き続きフツーの会社に出向して働いてるわけですが――。

 さすが大企業、すげえ! この不景気でも湯水のごとく金使ってる。
 つくづく思ったよ。中小企業なんかでチマチマ働いてる奴ぁバカだね。ましてエロゲ屋なんてw

 旧財閥系のシステム屋。オフィスはベイエリアの高層ツインタワー。
 地上60mの社員食堂。うおー、パノラマ撮りてー! てな帝都の大展望を堪能しつつ、定食にデザートのメロンもつけて400円でお腹いっぱい。
 すべてのマシンには使いもしないオフィススイートがインストールされ、バイトに毛の生えた程度のオレにも携帯電話貸与。
 大したスキルもいらない仕事が、オレの生涯最高年収時と同等以上の時給。
 残業分も当然きっちり支給&22時以降は25%増し&終業が終電を過ぎた時にはタクシー代またはホテル代支給。
 ああ、まるで夢のようです――。こんな環境でエロゲつ(ry

 真面目な話、金は大企業とそして東京に、不当に偏在しているのでした。
 天国と地獄の山崎努の役がやれそうな、若干そんな気分。

 でもひとつ、非常に失望したことがある。
 それはOLのお姉ちゃんが萌えないってこと。受付の姉ちゃんも萌えなきゃ、OLさんたちも萌えない。OL好きにかけちゃ人後に落ちないヲレですら。
 どーなってんだか。

 なぜ萌えぬのかと言えばその理由は――と、これも守秘義務の範疇か知らん。





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