▲侘 寂 萌 インデックス



XX

 えーま、なんですなぁ、デフレだリストラだと相変わらずの不景気でございますが――。
 ワケあってここんところフツーの会社に出向いて仕事する機会が多いんですがね、いやまあ驚くようなことばかりでございましてねえ、大げさにいやぁ、それ、カルチュア・ショックてなもんです、ええ。
 なにしろアタクシなんざヘソの緒切って以来フツーの会社で働いたことがござんせんものですから、まずなにがビックリしたと言ってアレですよ、第一に受付嬢。まぁ、なによりこいつにビックリいたしましたねぇ、ええ。

 美人。いや美人ですなぁ、二人が二人とも。
 スタイル。いうことなし。
 笑顔。さすがスタッフサービス。時給1850円はダテじゃない。スマイル\0とは笑顔が違いまさぁね。もう見るからに1850円なのよー、てな笑顔。アンタ(アタクシ)の2倍なのよー、てな。
 しかし――。しかし、なんですなぁ。
 そのスタッフサービス1850円のネエチャンらに萌えるかと問われれば、これが萌えない。実にもって完膚無きまでにピクリとも萌えない。
 うわっ張りに、ベニ・オシロイに、靴にバッグに、エステに、5kgのダイエットにと、その努力たるや大変なもんでしょうな。
 しかし、なんですなぁ。その不自然な受付嬢スマイルからアタクシが受ける印象は「彼女らはこれで毎日ホントにシアワセなんだろうか?」てぇことなんでさぁね。
 もっとも、何年も収入ゼロのエロゲ屋崩れのアタクシが、ひと様のことをどうこう言えた義理じゃあござんせんがねぇ、ええ。どっちが不幸か、世間様に判断仰げば、これぁ十人が十人とも「お前さんほどじゃあるめぇヨ」とでも皮肉を言うでしょうな、タハハ。

 しかしエロゲ屋なんてぇヤクザな稼業で糊口をしのいじゃいても、アタクシは本質的にフェミニストですから、ええ。衷心から、女性のつらそうな姿を見るのは耐えられないんですな。
 確かに努力した分、1時間座ってるだけで1850円ものお給金を貰えはしますがね、本質的には彼女たちの努力はまったくの無駄なんですよ。それは本人が一番よっく分かってる。
 女てぇのはちょいとキレイだと、誰もが「ケータイかパソコンで、えーしーおーえむどっとじぇーぴー、と打ってみてください」と言っただけで、男が萌えると勘違いしちまうんでしょうかねぇ。いやあのCMは萌えますがね。実に萌える。ネットサーヒンしながら見てると、思わずエー・シー・オー・エム・ドット・ジェー・ピーと打って危うくリターン押しそうになります。アブナイアブナイ……て、いやまあ、んなこたぁどうでもよろし。

 ともかくまぁなんといいますか、日本経済の無駄が、つまりはこのデフレ・不景気の根本原因が、あのスタッフサービス1850円の笑顔に象徴的に表れておると、おおげさにいやぁ、そんな風に感得したわけでございます、ええ。
 いえね、なにも無駄はいけない、てなぁ書生じみたことを言おうってんじゃございません。無駄にも、必要な無駄と、必要でない無駄があるわけでありまして、あの1850円の笑顔は、果たしてどっちの無駄であるのかと、そんなことをいい機会ですから、これからしばらくチンタラ仕事しながら、つらつら考えてみたいと、そう思った次第でございます――。



妹萌

 てゆうか妹とエチさせるのなんて簡単なんですよね。
 ゲーム中、主人公が妹とってことだが。義理とかでなく。
 法律的にもオッケーで、もちろんソフ倫のW藤(佐&安)連中にも因縁つけさせないで。

 一卵性双生児の姉妹(x1, x2)と、別の両親から生まれた、同じく一卵性双生児の兄弟(y1, y2)を考え、このx1とy1、x2とy2がそれぞれ結婚する。
 双方の夫婦に生まれた子供同士は法的にはいとこであり4親等だが、生物学的、遺伝子レベルでは兄弟姉妹と同等である。一方の男と他方の女がペアとなれば、これで実質的に兄妹または姉弟間のエチー成立というわけである。てゆうかこの歳になってそこらのリア厨みたいにエチーとか書いてるのつらいっす。

 しかし、である。果たしてこのシチュエーションが萌えるだろうか?
 否。萌えない。たぶん萌えないと思う。萌えないんじゃな(ry
 オレ、妹属性ないし、炉利でもないし、鍵っ子でも鬱ゲー泣きゲー萌えでもねーけど、恐らく萌えないと思う。マニヤの皆さんも。
 妹属性というものは、なにもマジ妹をどうこうしたいとか、そういうヤヴァイ野心の発露ではないんである。
 簡単にいえば妹属性=ペット属性。そんだけ。ヲタの皆さんは生身の女なんぞ求めちゃいないんですよ。そんな余裕などない。
(自分でも意識していないわけのわからぬ恐怖に取りつかれているから。その恐怖の正体とは簡単にいえば死の恐怖なのであるが、それが死であることも、自分が恐怖に捕らわれていることすら確とは自覚していない。現実の妹ってのは当然ながら死にますからね。死ぬものには萌えないんですよ、ヲタは。ゲームの中の妹は死なない、てゆうか死なないからあれは妹じゃあないんです。よくいえば、センス・オブ・ワンダーを求めてヲタは妹属性に走る。悪くいえば単なるノゾキオヤジ趣味)

 であるからソフ倫が妹属性だとか生徒という単語だとかを規制しようとするのは、まったくもって馬鹿馬鹿しい権力志向の発散以外のなにものでもありません。
 いくらトンチンカンな(新宿西口豚珍館マンセー!)自主規制をしたって、いくらでも抜け道はあるわけで、ソフ倫に嫌がらせするために上記の設定で妹属性物1本作ったっていいんだけど、まあ面倒だわな。馬鹿らしいですわ。

 要するになにがいいたいかっていうと、
 たかが年鑑ごときにいい紙使いすぎなんじゃ、ヴォケ! >ソフ倫
 てことです。



馬鹿

 馬鹿――ということが好きである。
 ポニーテールの幼なじみの「ばかっ! あんたなんか大っキライ!」の馬鹿でなく、赤ちょうちんで頓馬な上司を腐して言うところの馬鹿でもなしに、規格外、破天荒、前代未聞にして空前絶後。古い音楽業界人言うところのキチガイと同義の、役者馬鹿――と勝新の修辞に使われるその馬鹿。

 さて、数あるFMプログラム中、唯一僕が欠かさず聞くのが山下達郎の「サンデー・ソングブック」であるが(しゃべりオモロイよな)、いつも山下達郎のCDを買おうと思いショップで手に取っても「ま、次の機会に」と棚に戻してしまう。
 これがつまり馬鹿と大いに関係のある話。
 今ひとつ食指の動きが鈍いのは、山下達郎の音楽は馬鹿チックフレーバー・ゼロ%だからである。
 楽曲の構成、ボーカル、サウンドとも申し分なし。非の打ち所がない。知的でオサレ。
 しかるに残念ながらリズム・メロディ・ハーモニー、それ以上に音楽にとってのキモである馬鹿エレメンツに欠けている。

 馬鹿音楽の筆頭はといえばZEP。レッド・ツェッペリン。
 山下サウンドに比べれば弱点だらけ、ザル同然。ワンパターンな曲調、ひたすら重いリズム、ジミー・ペイジの下手くそなギターソロ。
 しかしあのギターのリフを聞いた瞬間にもう血がたぎる。音は鼓膜から脳に伝わるのではなく、全身の皮膚から直接神経の末端をショートさせ、日常に倦んで萎縮していた感覚を覚醒させる。圧倒的にして官能的なる恍惚と全能感。
 まあ、そんな馬鹿性の欠如に関して、山下達郎自身はンなことぁ百も承知なわけだが、ヲレ自身も同様の欠乏感を抱えるが故に、CDはまだ買わずにいるが山下達郎にはシンパシーを感ずる。

 ZEPに対するこの感情こそはプリミティブな愛の言わば同位体である。
 自分の内なる欠漏部より生まれいずる思い――これが愛の本質である。雌雄の性器の形状云々とか、そういう高校演劇部女部長好みの話でなしに。
 そしてこの愛を陽画とするなら、萌えとは陰画に相当する。
 同じ欲求を映したように見えて、その本質は逆相の関係にある情熱なのである。



普通の人々

 印刷屋の社長さんにパソゲー屋なんすよと話したら、ホウと感心し「それは華やかな仕事で」と大真面目に返された。
 華やかなんて言葉に大いに笑いつつ、とんでもないと首を振ると、オジさんは「ウチみたいな仕事は地味でつまらない仕事でねえ」と笑う。
 「つまんないのはこっちこそですよ、マジで」 僕はなんだか急にこの鶴田浩二にそっくりなオジさんの会社で働いてもいいかなとか思ってしまって「ゴナ12Qとかできますよ」と半ば冗談で言ったら、「長いこと一生懸命やってきたんだ、頑張りなさいよ」と、またしてもマジレスされてしまった。
 エロゲなんてものの存在を知らず、コンピュータを魔法の箱の如くに考えているだろう、そのオジさんの言葉はやけに肺腑に染み入った。
 ハハ、まあそうですね…と僕は答えた。





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