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2001/ 04




●2001/04/17 (火) 通俗性

OLYMPUS OM-2  OLYMPUS OM-2。オリンパス光学工業が1975年に発売した一眼レフカメラ。
 これとほぼ同じデザインのOM-1(M-1)は1972年発売。29年後の現在でもなお古さを感じさせない極めて優れたデザインだ。
 設計,デザインは当時30代の天才エンジニア米谷美久

 日本の製造業は数々の優れた工業デザインを残してきたが、なかでもこのOM-1, OM-2は白眉のひとつだろう。
 端正なフォルムには零戦や戦艦大和にも通じる、日本的エレガンスがある。

 僕は別段カメラ(写真)が趣味ではない。カメラに限らず、車やパソコンなどのハードウェアにはあまり興味がないという珍しい部類だ。
 しかしこのOMシリーズのカメラだけは別だ。完璧にOM萌えだ。
 貧乏なので、なにかをコレクションする趣味はなかったのだが、このOM-2は生まれて初めてコレクションとして買ってしまった物だ。

 さて――。OMシリーズはデザイン以上にその機能が優れていた。
 徹底した小型,軽量,静音性の追求。世界初のTTLダイレクト測光を始めとして、随所に斬新なアイデアが詰め込まれていた。

 しかるに、OMシリーズ(オリンパス)は、銀塩一眼レフカメラの市場において敗北した
 今後、オリンパスが銀塩一眼レフの新製品を発表することは絶対にない。
 AF一眼レフのシステムを完成させた他のカメラメーカー4社(キヤノン,ニコン,ミノルタ,ペンタックス)に対して、オリンパスは現在、たった4人の人間が、非AFの一眼レフカメラを細々と組み立てるのみだ。

 このことは通俗性ということに関して、大切なことを教えている。

 日本戦争負けたオリンパス負けた
 それはエレガンスを追い求め過ぎたからだ。通俗性を嫌い、美学を貫いてしまった。

 だが、この敗北になんの意味もないのかといえば、そうではない。
 零戦を作り上げたのと同じ技術者魂は、確実にソニーやホンダに受け継がれたわけだし、大和なんて無用の長物を作ってしまった闇雲でオタッキーな情熱はマンガやジャパニメーションやHENTAIASIMOに脈々と息づいている。

 闇雲ってところが重要だ。
 闇雲な情熱に敬意を表し、冷静に正しく賛美する。こいつもまた重要だ。
 (よき通俗性とはなにか、この項続く...)


●2001/04/12 (木) 味わい

 無闇にマヨネーズをかける傾向など、以前から若者の味覚に異常が認められるが、この要因ははっきりしている。
 味付けとは別の問題だ。

 食べ物の味を決めるのには、味付け以外に、見た目食感(汁気を含む食感)という要素が意外に大きい。(それからついでにもうひとつ、シチューエーション。いつ、どこで、誰と食べるか)

 これは夜、電気を消してものを食べればすぐにわかる。
 暗い中ではなにを食べても、味がぼんやりしてしまう。
 高校の時、放送部員だった僕は、これを暗幕を引いた視聴覚室でスピーカーのセッティングをしながら弁当を食べている時に発見した。

 暗い中で食べるものが電子レンジで温めた弁当なら、さらに自分がなにを食べているのか分からない。
 例えば幕の内弁当が分かりやすい(分からないのが)。煮物なのか天ぷらなのか、極めて分かりづらい。
 これは食感がすべて同じだからだ。電子レンジで温めた弁当はすべてぐちゃぐちゃと同じ食感になってしまう。
 この食感はマヨネーズの食感に酷似している。

 過剰なマヨネーズ志向、柔らかいもの志向は、確かな食感のある味わいを知らないことからくる。(ラーメンの過剰な人気も含まれるだろう)
 原因としてはまあ、カップヌードルとかファーストフードとかコンビニ弁当とか、戦後の劇的な食生活の変化とか。昔の給食のまずい食パンというのもあるか。

 確かな食感の味わいを知らなければ、マヨネーズは充分美味しい。
 だが、過度なマヨネーズ好き=味音痴であることは決定的だ。
 これは好みの問題ではない。音痴は音痴、それを個性的な歌唱法とは言わない。

 なにが美味いか、ということは身近な話題だ。出身地によって、年代によって、家庭環境によって好みが分かれて面白い。
 しかし、味音痴の人間同士では最初から議論にならない。

 最近は、味以外でも、議論がかみ合わないことが多い。

 例えば身近なところでは、エロゲに関する論争がそうだ。
 感動や萌えに関する論争は、「食感」を知っている人間と知らない人間の間で、未来永劫平行線だ。

 でも、僕はコンビニ弁当もマクドナルドも好きだ。ただし、シチュエーションにより。
 雨の日、家から700km離れた北の果て、日本海に降る雨を眺めながら食べるコンビニ弁当はすごく美味しい萌えっ!





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