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Open Lands


Open Lands

表紙には小さな赤い文字で、Travels through Russia's Once Forbidden Placesとあります。
アメリカの外交官?が、1992年、"Open Lands"条約によって開かれた、冷戦時期にはアメリカには閉鎖されていたロシアの都市を巡った紀行です。

Великий Устюг
Воркута
Архангельск, Соловки
Кабардино-Балкария
Тува
Камчатка
Владивосток

それぞれの都市、地域で出会うおかしな体験だけではなく、その地域の歴史、アメリカとの興味深い関係などが描かれています。普通の旅行紀行とはかなり趣が違い、モームがただの作家ではなかったということは周知の事実ですが、どうも彼の旅行を連想してしまいます。
カムチャッカでは、知らぬ間に間違ったバスに乗って、空軍基地に迷い込んでしまい、警察に尋問されたりします。著者の父親はCIAだったとありますが、...。

というわけで、ひと味もふた味も違ったロシア紀行です。それぞれの章の記事を抜き出してみると、こんな具合でしょうか。

銀細工の伝統も絶え絶えとなった都市。
収容所列島の起源ソロフキ。
ロシア革命の初期に干渉したアメリカ軍の兵隊を懐かしむ老婆が、『赤軍も白軍もよくなかった、アメリカの兵隊さんはよかった。』と語ります。
虐殺の後、民族大移動をさせられた後の傷が決して癒えていないコーカサス地方。
仏教、シャーマニズムがすっかり廃絶させられたトゥヴァ共和国。モスクワから東南アジアへの中継空港を作りたいと夢想する人。
KAL撃墜事件にからんだ空軍基地のあるカムチャッカ。体制崩壊の後、虎や熊のような貴重な生物を捕らえる密猟者。
港と丘という作りがサンフランシスコに似ているというウラジオストック。(もちろん、どこが似ているものかというのが著者の見方のようです。)
ユル・ブリンナーは、ウラジオストックの豊かな商人の師弟で、実家は未だにウラジオストックの岡にあるそうです。

(1999年1月17日記)

原爆の実験場、ロシア語でいうポリゴンのおかげで多くの国民が後遺症、奇形に悩まされ続けているカザフスタンに立ち寄った記述は見あたりません。ロシアではない、といわれればそれまでです。
また、サハリン撃墜の五年前に、同じ航空会社で同じ国境侵犯問題があった、ソ連の反対側の国境地域ムルマンスクの詳細な記述もありません。外人が宿泊するホテルなどの他のポイントについて蒸発したかのごとく、記述皆無なソ連時代の奇怪なムルマンスク地図があるという話題が冒頭にでてくるのですけれど。
石原慎太郎の新刊『国家なる幻影』の「大韓航空機撃墜事件の真相」や、「湾岸戦争の本質」の章を読みながら、Open Landという本書、そのあたりがどうもClosedなBookだなあと、下司な猜疑心を深めた次第。(1999年1月25日追記)

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