The White Russian


1917年1月、シベリア流刑から戻ったばかりのペテルブルク警察刑事サンドロ・ルジスキーは、冬宮前の氷結したネヴァ河上で発見された、若い女性と男性刺殺死体事件を担当することになります。大蔵省高官の父親を持つ貴族ながら、あえて高貴ならざる仕事についていても、調査にかける情熱は本物です。彼は大胆にも、ツアールスコエ・セローまで出かけ、極めて高位な女性にまで尋問し、背後にはなにか大きな秘密があることを感じます。女性は皇太子の世話をしていた人物、男性は、アメリカ人で列車強盗犯であることを突き止めます。

不倫の妻は冷淡で、疲れた彼には会おうともせず、息子にも会わせようとしません。そこで、思い出されるのは、以前つきあっていたマリインスキー劇場の美人バレリーナ、マリア。彼は部下のパヴェルと二人で、オフラナの妨害にもめげず困難な調査を続行します。

冷たい妻、父に代わって、相手をしてくれるのは戦線から帰郷中の弟ドミトリーと、その妻イングリッド。事件の背景を追って、二人の刑事はヤルタまで足をのばすのですが...。

革命前夜の貴族、革命家達、ツアーの家族などがたくみにおりこまれて、話はどんどん急展開する面白いミステリーでした。革命のあと彼らはどうなったのだろう?とふと考えてしまったり。(勿論フィクションなのですが。)巻末に当時のロシア史に興味をもった読者に対していくつかお勧めの参考書があがっています。中にオーランド・フィジェスのA People's Tragedyがあがっていてなるほどと思わされました。(そちらは厚い歴史書なのでツンドク状態。)

彼の前作The Master of Rainは1926年の上海を舞台にした作品で、これもamazonでも、激賞されており、実際Best British Crime Novelにノミネートされているようです。イギリスのテレビ放送局ITNの特派員だとフラップにあります。扶桑社ミステリーで、「哀しみの密告者」Shadow Dancerという同じ名前の作者の本がでています。それについては、アイルランド・イギリスの紛争がテーマの、カタルシスのない重い本という書評がどこかにありました。こちらの「ホワイト・ロシア」も革命直前の時代が舞台、カタルシスのない重い本ということで、恐らく同じ著者なのでしょう。二作目The Sleep of the Dead?もなんだか面白そうです。

2003/8/25記

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