■BRAKE■


●フロントオイルブレーキ
  
【T1100/T1500】(1959年

 
T1100/T1500では、東洋工業の3輪トラック史上初となるフロントブレーキが採用されました。ついに実現した全輪ブレーキは、制動性能の20%もの向上(前モデル比)をもたらし、エンジンの水冷化と並んで、Tシリーズ誕生におけるもう一つの大きなトピックスといえます。ちなみに1t積みクラス(T1100)では、フロントブレーキの採用は国内初となりました。
 なお、フロントホイールが小径15インチのもの(2トン積み・13尺車のみ)と、他の16インチのものとでは、フロントブレーキシステムの円周上の取付け角度が若干異なっています。(写真は15インチのもの)
 その後1962年にはブレーキ調整作業を容易にするための改良が加えられています。


 


デュアル・2リーディングブレーキ
  
【T1500/T2000】(1962年)

 
T1100/T1500での油圧式フロントブレーキの採用で制動能力を飛躍的に高めたTシリーズは、続く1962年のT1500/T2000移行時にはリアブレーキに改良を加え、より強力なブレーキシステムへ発展しました。

 従来、リアのドラムブレーキ形式はリーディング・トレーリングタイプでしたが、これが複動2リーディングタイプに変更されました。正逆方向いずれもドラム内面の2箇所でシューが喰込み方向に作用する方式を採用したことで、前進/後退ともに軽いタッチで大きな制動力が得られるようになりました。当然ながら、パワフルなエンジンを搭載し、かつ、2トン+αの積載では総重量が4トン超にも達するニューモデル・T2000においては、絶対制動力の向上は不可欠な要素であったに違いありません。
 これと同時に、駐車ブレーキはセンターブレーキ(推進軸制動)となり、走行用ブレーキと駐車用ブレーキが二系統で独立した機構となりました。


●ハイドロマスター付きブレーキ
 
 【T2000】(1965年)

 
T2000のブレーキにはマイナーチェンジでハイドロマスター(真空倍力装置)が標準装備されました。ハイドロマスターは、エンジン回転時にインテークマニホールド内に発生する負圧を利用し、大気圧との差によってブレーキのシリンダーを押し出す推進力を作り出す装置で、E2000をはじめとする当時の東洋工業の商用車に順次採用されていったものです。その効果は、踏力50kg時では制動距離が1/2に、同80kg時には制動距離が2/3に短縮するとされています(数値はE2000での例)。