●8尺低床・一方開
    (1963年式 TTA85)  

 


●8尺低床・三方開
      (1968年式  TUB85N)

 
 Tシリーズの中で最も前後長の短いタイプが、荷台長2.38mの8尺荷台です。低床タイプのため、床面には左右後輪のタイヤハウスの出っ張りが見られます。
 後部アオリのみが開閉する
一方開きは、マツダのオート3輪で最も古くから存在するスタンダードなタイプで、カタログ等では標準車と呼ばれていました。
 ほぼキャビン幅内に収まるという、スリムな荷台幅が一方開きの特徴です。
 荷物の積み下ろしが楽な低床タイプに加えて、左右のアオリも開閉可能として利便性を高めたのが三方開きです。荷台の横幅がキャビン幅よりも大きいため、車両の全幅は1800mm超となります。
 8尺車は、Tシリーズにおいては最大積載量の小さい1t〜1.5t積クラスのイメージが強いのですが、2t積クラスにも設定されていたようです。
(追記)2t積みの8尺はホイールベースが135mmも長く、タイヤハウス位置はかなり後ろ寄りだったようです。


●10尺高床・三方開
      (1970年式 TVA12S)


●10尺低床・一方開
       (1969年式 TVA12)
 
 歴代の2t積クラスの中で最も代表的な存在といえるのが、荷台長さ3.13mの10尺荷台です。車両全長が5.12m、最小回転半径は5.1mで、積載能力と取回しの良さを巧みに両立させた機種といえるでしょう。
 10尺の
三方開高床タイプとなり、完全にフラットな床面を実現することで、抜群の積載性を確保しています。床面は全面木張りになります。
 T2000ではもっともポピュラーな存在ですね。
 低床の利便性を確保しつつ、長尺物の積載を可能としたのが10尺低床です。
 T1500が2t積だった時代には中心的存在でしたが、やがてオート3輪が小型トラックの主役の座を奪われ、需要が特定業種に絞られていく中で、10尺低床の存在価値は徐々に薄れていったものと思われます。
 そのため、写真のように最終型に近いT2000の10尺低床は稀少な存在といえます。




●13尺高床・三方開
     (1971年式 TVA32S)

   
 Tシリーズの荷台バリエーションの中でもひときわ目立つ存在であるのが、4.08mという圧倒的な荷台長さの13尺車です。車両全長は軽く6mを超え、左右のアオリのヒンジの数はじつに7個を数えます。
 超ロングと称され、普通トラックにも匹敵する荷台長さを誇る13尺荷台の登場の歴史は、オート3輪の大型化が進んだ'50年代初頭にまで遡り、1952年に発売されたCTL2型がその起源といわれます。戦後のトラック輸送の主役を担っていたオート3輪の急速な進化を象徴する存在といえます。
 オート3輪はかつて保護策によって寸法無制限とされていた時代の名残りで、この大きさでも小型車扱いで良かったため、同サイズの4輪トラックに比べて格段に小回りが利くこと、かつ、長尺物の積載が可能であることから、材木商を中心に絶大な人気を獲得しました。13尺車はまさに、細い山道に分け入って長い木材を切り出すのに最適な存在であり、このことが、1970年以降も受注生産で販売が続けられた最大の理由といえるでしょう。
 木材をはじめとして長尺物の運搬に活躍した13尺車には、とりわけ頑丈なロードレストを備えたものが数多く見られます。