<旧車シリーズ 822>


DAIHATSU SSR型


 
1952年、ダイハツは戦前からのオート3輪のイメージを払拭するフロントキャブ付き車を初めて登場させた(SN/SSN型)。平鋼板で形作られた無骨なキャブスタイルだったが、それまで完全に剥き出しだった運転席が風防ガラスや幌屋根で囲まれるようになり、一応の風雨をしのげるものに進化した。
 翌1953年発売のSR/SSR型では、所々に曲面を配したプレス鋼板製カウルとなり、スタイルが一段と洗練された。ボディの塗装は赤外線乾燥炉で合成樹脂塗料を用いたものとなり、質感が大きく向上している。ヘッドライト横のダイハツマークとその下のスリットグリルはそれ以降、ダイハツ製オート3輪の最終モデルまで受け継がれることになった特徴的なアイテムである。
 当時のパワーユニットには1005ccと1431ccの2種類の新しい空冷V型2気筒エンジンがあったが、これらは1〜2トン積み車に優先的に投入され、750kg積みのSSR型には、戦前からの流れを汲む空冷単気筒736ccのGK型エンジン(最高出力14.5ps)が搭載された。GK型エンジンはその後、水冷エンジンが主流となる1957年頃まで、廉価版トラックのパワーユニットとして活躍した。


 
当時のオート3輪としては画期的なフロントキャブの採用も、よく見るとボディサイドにはまだ何の囲いもなく、走行時の雨の降り込みはかなり激しかったものと思われます。補助席乗員に至っては、雨具による完全防備が必須だったことでしょう・・・。まだまだ快適性とは程遠いようにも思えますが、従来の2輪車プラスアルファ感覚の簡易的な乗り物から、また一歩「自動車」へ大きく近付いた貴重なステップには違いありません。

推定年式:1954
撮影時期:2000年9月
撮影場所:広島県福山市北吉津町 福山時計自動車博物館にて