<旧車シリーズ 811>


MAZDA CTL型


 
1950年に登場したマツダCT型は、年々高まっていった3輪トラックユーザーの大型化・高性能化の要望に応えた画期的なトラックであった。工業デザイナー・小杉二郎氏のアドバイスによるカウルデザインは、運転席周りが剥き出しだった従来のスタイルとは明らかに一線を画すものである。また、ウィンドシールドには安全合わせガラスを採用した。
 国産乗用車がまだサイドバルブ式だった時代に、CT型の空冷V型2気筒エンジンはオーバーヘッドバルブ式を採用しており、1157ccの排気量から32psの最高出力を発生した。さらに、タペット音低減のため油圧式バルブクリアランス自動調整装置を採用したほか、エンジン振動の緩和のためにゴムブッシュマウントを採用したことも注目に値し、従来は無視され続けていた3輪トラックの快適性を大きく前進させていたことがわかる。1トン積み車のラインナップや、セルモーターの装着も業界初の試みであった。
 翌1951年に発売されたCTL型では、幌屋根を持つ初の全天候型キャビンが話題を呼んだ。同時に荷台を1m伸ばして約3mとし、長尺物の積載を可能にしたが、これは車体寸法の規制のない小型3輪車の特権を生かしたものである。1952年には業界初の2トン積み車(=写真)を登場させた。


 
CT型はその先進性で一躍業界をリードする存在となり、すっかり勢いを付けた東洋工業はついに1956年、オート3輪製造台数で業界首位に浮上することになりました。
 こうして歴史に大きく名を残すCT型ですが、写真のようなとびきり保存状態の良い個体が、マツダ本社ミュージアムではなく、廉価な4輪トラック攻勢で3輪車業界を駆逐した宿敵のトヨタ博物館に展示してあるのは、なんとも皮肉な話ですね。


推定年式:1953
撮影時期:2000年5月
撮影場所:愛知県長久手町 トヨタ博物館にて