<旧車シリーズ 614>


MAZDA D2000 (DVA12B)


 
東洋工業のDシリーズトラックは、一時代を築いたオート3輪に代わる商品として送り出された小型4輪トラックで、そのルーツは1958年に登場したロンパーまで遡る。
 ロンパーは1959年に空冷エンジンを水冷エンジンに換装したのを機にD1100/D1500にネーミングを変更、さらに1962年には小型車枠の拡大に伴い、D1500/D2000へ発展する。Dシリーズはセミキャブオーバースタイルながら、エンジンをシート下に搭載する3人乗りのキャビンを持ち、シンクロメッシュ機構や、コラムシフト等の最新メカニズムを採用していた。その一方で、フロントウィンドウをはじめとして、オート3輪との共通部品も多いのも特徴である。シリーズ最後発となったD2000は、VA型1985ccエンジンを搭載する2トン積みトラックで、大型車並みの全浮動式リアアクスルを採用している。
 D2000ではバリエーションの一部としてLPG車も用意されたが、一番の変り種は国鉄と共同開発した道路・軌道兼用トラックである。車体下部に軌道用車輪と車体転換装置を内蔵し、2トン積載+7.5トン牽引の状態で、水平軌道上を50km/hで走行することができた。

 
 
Dシリーズはオート3輪のTシリーズと同時期に登場し、その後の進化を共にしたトラックですが、1965年までに後継のクラフト/E2000にバトンタッチして姿を消したためか、現存車両は皆無に等しく、半ば伝説化した存在となっています。写真のD2000は私が唯一目撃したナンバー付き車両ですが、特殊用途の道路・軌道兼用車だったがゆえに、例外的に長期間にわたる延命措置を受けていたものと思われます。

推定年式:1964
撮影時期:1983年3月
撮影場所:山口県徳山市権現町にて