ウミウシの飼育

はじめに
 ウミウシを飼育する際のに注意することは、主に @餌の調達、A温度、B他の生き物との関係等があります。 中でも最大の問題は餌のをいかに手に入れるかということです。 この餌の調達が難しいために、ウミウシの飼育は難しいといわれています。 ウミウシは海水魚のショップでたまに売られているらしいですが、 餌は基本的に売られていません。 餌は、現状では基本的に自分で調達するしかありません。 ここでは、 ウミウシを飼育している水族館に勤務している方およびウミウシの研究者からの話、 または自身の経験に基づいて、 長期飼育が可能であったウミウシおよび長期飼育が可能であると思われるウミウシの 飼育について紹介します。

ウミウシと餌の入手
 ウミウシを入手する方法として、海での採集と購入の2つの方法が考えられます。 ウミウシを飼育する場合、常に餌の調達を考える必要があるため、 ウミウシの入手も、餌の調達と共に考えなくてはいけません。 海水魚ショップで、販売されているウミウシは、色彩が綺麗なイロウミウシの仲間および イボウミウシの仲間が多いようです。イロウミウシやイボウミウシのウミウシの餌は特定のカイメンですが、 餌となるカイメンは販売されていないので、きちんとした飼育は難しいです。 (ライブロックについているカイメンでは量的に不充分で、かつカイメンなら何でも食べる 訳ではないので、餌のカイメンである可能性は低いです。) そのため、海水魚ショップでの、購入は私自身は、あまりお勧めできません。 なお、購入したウミウシは、近くの海に放してはいけません。 在来種以外のウミウシを放すことにより、生態系を崩す恐れがあります。
 もうひとつの方法、採集の場合のメリットは、餌を一緒に採集できることですが、 その後も海に定期的に来て餌を採集する必要があります。 実際、ウミウシの飼育をしている施設や研究者は、多くの場合、海の近くで ウミウシと共に餌が採集可能な環境にあります。 餌が、自分で供給可能かどうかよく考えて採集しましょう。

 ウミウシは種類によって居場所が異なりますが、アオウミウシやシロウミウシ等の ドーリス科のウミウシは磯の垂直またはオーバーハングした日陰の岩壁で見られます。 メリベウミウシは海中の石底に張り付いています。オカダウミウシは、ウズマキゴカイのついている 潮だまりの中の石についています。 多くのウミウシを見つけるには潜るのがベストですが、大潮の干潮時ならば潜らずに見つけることもできます。
 ウミウシを見つけたら、そのままじっくり観察してみましょう。 複数のウミウシが集まっている場所には餌がある可能性が非常に高いです。 慌てなくてもウミウシは逃げたりしません。


 ウミウシは、特定のカイメン、コケムシ、ヒドロ、海藻等を食べます。 飼育するためには餌を知る事、入手することが最も重要となります。 そして、餌の長期保存法もしくは餌の繁殖法がない限り、 定期的に海に餌を取りに行かなければなりません。 餌を知るためには、図鑑や文献などにより調べる方法と水中での観察による方法があります。 図鑑や文献には、少数のウミウシについては、餌が具体的に書かれていますが、 だいたいは、カイメンとかヒドロ虫といったあいまいな記載です。 イロウミウシの仲間は、カイメン。ミノウミウシの仲間は刺胞動物といった大体の傾向を 把握した上で水中観察を行うとよいかもしれません。
 下の写真は、磯でよく見られるアオウミウシおよびシロウミウシの餌である カイメンです。 このカイメンは比較的丈夫で、紐などを使い岩に固定しておくことで活着させることができます。 ある程度良好な環境では増えることもあるようです。 しかし、夏期で30度近い水温がある場合には腐ることがあるので注意が必要です。 腐った場合には、早く取り除きましょう。 また、このカイメンはニシキウミウシ、ミアミラウミウシ、カドリナウミウシの餌でもあるようです。



◆簡易に飼育できる可能性のあるウミウシ
 ・ムカデミノウミウシは体に共生藻を宿すことが知られています。 共生藻が光合成により作り出す栄養をもらって、生きています。 以前鴨川水族館に問い合わせたところ、ムカデウミウシを展示しているそうで、 光を当てるだけで飼育しているそうです。飼育期間はちゃんとチェックしていないので不明だそうです。 研究員のyamさんが、ムカデミノウミウシ を日光に当てて5ヶ月弱飼育しました。 その時の飼育条件を教えてもらいました。 他にも、水槽環境下で光を当てることで半年近く飼育したという話を聞きます。 ただ、餌はヒドロ虫で、ヒドロ虫を食べないで、光を当てるだけで、本当に十分なのかは、疑問に思っています。
 ・メリベウミウシは小型の甲殻類をあの大きな口で捕食します。 小型の甲殻類を与えれば水槽でも、飼育が可能かもしれません。 簡単なものとしてはブラインシュリンプなど考えられます。 ブラインシュリンプだけだと栄養不足になるかもしれないので、 海藻を洗って出てきたヨコエビやワレカラなどをときどき与えるとよいかも。
 ・アエオリディエラ クロモソマ Aeolidiella chromosomaはイソギンチャクを食べます。
ナガレイソギンチャクという水槽環境によく適応して、 簡単に水槽中で増えるイソギンチャクがいます。 ナガレイソギンチャクは、 サンゴを飼育する人の間ではカーリーと呼ばれ嫌われています。 サンゴを販売している店や知り合いのサンゴを飼育している人に頼めば簡単に手に入ると思います。
 ・ブドウガイは水槽に自然と生える茶色のコケを食べます。コケがある程度生える水槽であれば特に餌を 与えなくても成長します。幼生がろ過されにくい環境では、水槽でも繁殖します。 研究員yamさんのうちでは、2匹が何百匹にも増えたそうです。うちでは、常に20〜30匹ほど世代交代を しながら1年以上飼育しています。
 ・オカダウミウシは潮溜まりの石などに付いているウズマキゴカイを食べます。 ウズマキゴカイは潮溜まりで簡単に見つかるので、海に行けば餌の入手は楽。 直接発生なので、簡単に繁殖します。一度に5〜6匹増えます。
 ・ヒラミルミドリガイは海藻のミルを食べます。ハイミルは浅い場所でもよく見かける海藻で、 引き潮であれば海に入らなくとも採取が可能。
 ・コノハミドリガイはホソツユノイトなどの海藻を食べます。 ホソツユノイト等の海藻は水槽環境下でも、 条件さえ整えてやれば繁殖するので、比較的容易に飼育可能。 1月の間に1〜2cm大きくなります。 new!
 ・エムラミノウミウシは本来の餌はヒドロ虫ですが、アサリで長期飼育可能です。 このように海での本来の餌以外のものを食べるウミウシもまれにいますが、 特殊な例外と考えてよいでしょう。 new!


飼育環境
下の表はシロウミウシを300日(秋から初夏まで)飼育したときの飼育環境です。
ウミウシの寿命ははっきりしないのですが、一般に多くの種は〜1年くらいと言われています。 (複数年生きるウミウシもいるようですが) 採集した時点でかなり大きな個体だったことを考えると、ほぼ寿命まで生きたのではないかと思えます。
水槽サイズ60x30x45cm
ろ過上部ろ過(ろ材:サンゴ砂)
照明蛍光灯18Wx2灯
水替間隔1〜2ヶ月に10リットル程度
給餌間隔1〜2ヶ月に一度(カイメンを海から採集)
保温器具ヒータを20度設定(冬場)
冷却器具なし
添加剤なし
同居生物なし
その他デニボール&デニファー使用。
硝酸塩は10ppm〜20ppm。(TetraTestにより測定)

ウミウシの飼育経験のある水族館の方にお聞きした飼育情報です。( )内は補足です。
 ・高温はよくない。18度〜20度くらいがよい(24度くらいで飼育しているところもあります。)
 ・照明が強いとウミウシが隠れてしまう。(ムカデミノウミウシのような例外はあります。)
 ・水槽中では餌の匂いが充満して、餌を見つけるのが大変。 ウミウシの近くに餌を持っていってあげるとよい。

複数のウミウシの飼育
・同種のウミウシ
ウミウシは雌雄同体です。同種のウミウシが2匹同じ水槽にいれば 交尾・産卵します。産卵が寿命に与える影響は 不明ですが、どんな生物でも産卵は大きなエネルギーを必要とします。 長期飼育を目指すなら、同種は1匹にしておいた方が無難です。
・異種のウミウシ
このページの「ウミウシの写真」のコーナーに掲載しているウミウシについていえば、 異種のウミウシにはほとんど害を与えないと思われます。 しかし、ウミウシの仲間には他のウミウシを餌にするものがいます。 オオエラウミウシやイシガキリュウグウウミウシ等です。注意しましょう。

注意すべき同居生物
・ウミウシは体をまずくして魚に食べられないようにしているとよく言われますが、 捕食されることはよくあります。カゴカキダイは小さくてもアオウミウシの2次鰓および触角を食べてしまいます。 イシダイなどもウミウシをひと飲みしてしまうことがあります。魚との同居には気をつけましょう。
・まれにしかないかもしれませんが、鉄砲エビの作る穴に潜り込んで生き埋めになってしまったことがあります。
・逆にウミウシが、他の生物に害をあたえることもあります。それについては、おいおい詳しく書いていこうと思います。

注意すべき水槽器具
・ウミウシは穴によく潜ります。パワーヘッドに潜りこんでモーターに巻き込まれる可能があります。


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